米IBMは,分子の自己組織化現象を応用して半導体メモリー素子を製造する手法を開発した。同社が米国時間12月8日に明らかにしたもの。ウエーハに回路パターンを露光するリソグラフィ技術を使わない以外は,現行の半導体製造装置を流用できるという。「(リソグラフィのような)高コストの製造装置が不要な上,製造プロセスを大きく変える必要がないのでリスクも少ない」(同社)

 自己組織化は,ある種のポリマー(重合体)分子が自然に集まり,規則的な構造を作り出す現象。こうして生成される物質は,リソグラフィなど現在の半導体製造手法に比べ,より小さく,高密度で,欠陥の少ない素子になるという。

 同社は既存の半導体製造装置を使い,自己組織化を利用して,直径200mmのシリコン製ウエーハ上にフラッシュ・メモリーと同じ働きをするナノ・スケールの構造を作り出した。「ナノ・スケール結晶によるメモリーを作るのは,現在の手法では難しい。自己組織化を利用すると,フラッシュ・メモリーのような馴染みのある半導体素子を,はるかに簡単に製造できる」(同社)

 自己組織化を使った製造手法の実用化について,同社では,3年~5年後に試作レベルで利用可能になるとみている。

 なおIBM社は同手法について,ワシントンD.C.で開催中のIEEE International Electron Devices Meeting(IEDM)で,「Low Voltage, Scalable Nanocrystal FLASH Memory Fabricated by Templated Self Assembly(テンプレート化された自己組織化による,低電圧/拡張可能なナノ・スケール結晶によるフラッシュ・メモリーの製造)」と題する論文で紹介する。講演日は12月9日の予定。

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