米A.T. Kearneyは米国時間11月10日,無線ICタグ(RFID)技術に関する調査結果を発表した。それによると,RFIDの導入により,小売業者は在庫調整の拡充やコスト削減など多くのメリットが得られるが,少数生産メーカーにとってはコスト増加となり,投資回収まで時間がかかるという。

 大手小売の米Wal-Mart,さらに米国防総省がRFIDの本格導入を発表したことをうけて,小売業者やメーカーもRFID導入の検討を始めている。

 A.T. Kearney社は,RFID導入による小売業者の利益効果を次のように推定している。

・5%の在庫削減で,コストを節約
・店舗および倉庫の人件費を、年間あたり7.5%削減
・在庫切れ防止による利益は,年間売上高10億ドルあたり70万ドル

 電子製品コード(EPC)やRFIDの導入費用は,物流センターあたり40万ドル,店舗あたり10万ドル。このほか,組織全体でのシステム統合に3500万~4500万ドルかかる。

 メーカーでも,小売業者と同様に,RFID読み取り器やシステム統合などの初期費用が生じる。このため,食品や日常品など,廉価製品を大量生産しているメーカーのコスト負担よりも,薬などの高価な製品を少数生産するメーカーのコスト負担が大きくなるという。

 「RFIDの初期投資額は大きいが,小売業者はそれ以上の費用効果を得ることができる。一方メーカーでは,生産する製品の種類によって効果が異なる」(A.T. Kearney社バイス・プレジデントのDave Donnan氏)

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