米Intelは,高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜と金属製ゲート電極を使ったトランジスタの開発に成功した。Intel社が米国時間11月5日に明らかにしたもの。「high-k絶縁膜を使うと,これまで30年間使われ続けてきた二酸化ケイ素(SiO2)製ゲート絶縁膜に比べ漏れ電流を100分の1以下に低減できる」(同社)とする。

 現在のトランジスタには,ゲート誘電体と呼ばれる絶縁膜が欠かせない。絶縁膜の具体的な物質としては,製造しやすさと微細化しても性能を向上できるという理由からSiO2を使用する。

 LSIにより多くの回路を集積するには,トランジスタを小さくする必要がある。たとえば同社は,SiO2製ゲート誘電体の厚さを1.2nmにまで薄く加工することでトランジスタを微細化している。しかし,SiO2層が薄くなるとゲート絶縁膜から漏れる電流が増え,消費電力が上がるとともに発熱も大きくなってしまう。

 電子の流れを意図した通りに制御し,消費電力と発熱の問題を解決するために,同社は現行の薄い絶縁膜を厚いhigh-k素材に置き換えた。これにより,漏れ電流が大幅に小さくなったという。ただしこのhigh-kゲート絶縁膜は,現在ゲート電極に使われている素材とうまく組み合わせられないという課題がある。そこで同社は,ゲート用素材として新たに金属を採用した。

 同社によると,「high-kゲート絶縁膜と金属ゲートを組み合わせたトランジスタを製造して計測したところ,漏れ電流が非常に小さくなっただけでなく,動作性能も高い状態を維持できた」という。

 また同社は,「新素材は経済的な大量生産プロセスに適用可能であり,現在このトランジスタは研究段階から開発段階に移りつつある」としている。「2007年にプロセサ製造プロセスを45nm化する際,このトランジスタも合わせて採用する方向」(同社)

 なお同社は,11月6日に東京で開催される2003 International Workshop on Gate Insulatorで,新素材の開発に関する詳細情報を発表する。

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