米Intel，IDF Fall 2003でセキュリティ／信頼性向上や今後の開発方針などを発表

早坂利之

2003.09.17

　米Intelが米国時間9月16日に開発者向け会議Intel Developer Forum（IDF）Fall 2003で，技術／製品開発について今後の計画や方向性を発表した。Intel社社長兼COOのPaul Otellini氏が基調講演で語ったもの。

　Otellini氏は，「Banias（開発コード名）の詳細を発表してわずか2年でコンピューティングと通信の集約が進み，すでに主流となっている」と指摘する。「たとえば，全世界で毎日7万6000枚以上の無線ネットワーキング・カードが新たに導入されているという事実は，集約という状況が定着したことの現れだ」（同氏）

　同氏によると，この現象はパソコン以外の分野でも起きているという。「当社の予測では，現在のハイエンド・パソコンと同等の処理能力を持ち，通信機能を兼ね備えた無線ハンドヘルド機器が，2010年までに25億台以上使われるようになる」（同氏）

　また同社は，プロセサの動作周波数以外の部分でエンド・ユーザーにメリットをもたらす技術について明らかにした。それによると，同社は今後，セキュリティ／信頼性／メディア処理能力の改善につながる技術を提供する計画という。各技術の概要は以下の通り。

・セキュリティ技術「LaGrande」：
　プロセサ，チップセット，プラットフォームの機能を強化するLaGrande技術を開発している。LaGrandeは，米Microsoftが提唱するパソコンのセキュリティを高めるPalladium計画のハードウエア部分を担当するプロセサとチップセットの開発コード名。保護されたプログラム実行環境／メモリー空間／ストレージをユーザーに提供する。LaGrande用ソフトウエアと組み合わせて運用することで，コンピュータ・システムに対するソフトウエア・ベースの攻撃を防げるという。同技術は，2年～3年後に利用可能とする。

・信頼性技術「Vanderpool」：
　メインフレーム・コンピュータと同じように，1台のパソコンに複数の独立したソフトウエア環境を構築する技術，Vanderpool（開発コード名）を提供する。システムの信頼性，柔軟性，応答性を向上できるだけでなく，障害発生後の復旧にかかる時間も短縮できるという。

・メディア処理能力の改善：
　デジタル・メディアの処理能力を改善し，必要なコストを下げる技術を開発している。「この機能は，家庭において次第に重要度が高まるだろう」（同社）

　同社は半導体製造技術についても触れ，「高度な製造技術を導入することで，より小さな素子に多くの新機能を詰め込めるようになり，ユーザーの要求に応えることができる」と説明する。同社では，2011年までに22nmルールの半導体を製造する計画という。なおOtellini氏は基調講演の場で，65nmルールで製造したウエーハを初公開している。

　さらに同社は（1）エンタプライズ・コンピューティング，（2）モバイル・インターネット・クライアント，（3）デジタル・ホームという3つの分野に対し，今後数年間で以下のような取り組みを進めるとした。

（1）エンタプライズ・コンピューティング：
　集約を進めることで，無線ユーザーがインターネット上のデータベースなどのアプリケーションを利用できるようになる。具体的な製品としては，デュアル・コア構成の「Intel Xeon processor MP」（開発コード名Tulsa）やマルチ・コア構成の「Intel Itanium processor」（開発コード名Tanglewood）などを予定している。

（2）モバイル・インターネット・クライアント：
　異なるプラットフォームで動作可能な共通ソフトウエアの開発に注力する。

（3）デジタル・ホーム：
　同社は，「異なる機器間でコンテンツを共有するには，業界標準の仕様が欠かせない」とみる。そのため同社は，家庭でコンテンツ共有するための規格策定などを手がける業界団体Digital Home Working Group（DHWG）への参加や，デジタル・コンテンツを保護しつつ共有を図るDigital Transmission Content Protection, over Internet Protocol（DTCP／IP）の共同開発作業への協力などを行っている。