米IBMと米Agilent Technologiesは,米国防総省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)から光データ伝送プロジェクトの契約を獲得したことを,米国時間9月11日に明らかにした。契約は複数年にわたり,規模は3000万ドル。

 光データ伝送は,銅線の電気信号ではなく光ファイバ上の光導波を用いるため,より少ない消費電力で,より高速な伝送を実現する。当プロジェクトでは,現在システム間のやりとりに利用されている光接続の利点を,サーバー内部に取り入れることが狙い。モジュール・レベルで光接続を利用することにより,性能を高めるとともに,少ない電子処理ハードウエアを効率的に使うことが可能になる。

 「サーバー内部の通信バンド幅は,4年ごとに約10倍に高速化している。チップの速度が高まり,1台のシステムに搭載するプロセサ数が増えているためだ。2010年には,約40T(テラ)bpsにおよぶマイクロプロセサ間のバンド幅が必要になるだろう。IBM社とAgilent社は,この要求に応える光接続技術の開発に取り組む。速度だけでなく,消費電力,コスト,密度,信頼性の面においても課題の克服に努める」(両社)

 両社が共同で取り組む主な目標は以下の通り。

・総合データ・レートは1モジュールあたり最大1Tbps
・各チャネルの速度は,パラレル・リンクが最大15Gbps,コンポーネントが最大40Gbps
・2cm×2cmに満たない小型モジュール
・消費電力は5~10ミリワット/Gbps

 当プロジェクトでは,光モジュールとリンク,異種混合システムの組み合わせ,カード設計,コンピュータ・システムに関するIBM社のノウハウと,光エレクトロニクス装置やトランシーバに関するAgilent社の経験を持ち寄る。両社が編成するチームは,DARPAの高生産性コンピューティング・システム(HPCS:High Productivity Computing Systems)などでの使用を想定した将来のサーバーに必要な膨大な通信バンド幅の実現を目指す。

 「このプロジェクトは,コンピュータや通信システムの中心部への光接続導入を大幅に加速化することになるだろう。製造とシステムに関する両社の膨大なノウハウを集約し,将来製品に簡単に統合できるソリューションを開発する」(IBM社IBM Research部門光通信担当上級マネージャのMarc Taubenblatt氏)

 なお米メディアの報道(CNET News.com)によると,プロジェクトの最初の18カ月間は,必要なコンポーネントの構築に費やされる。順調に進めば,3年後にプロトタイプを完成する予定だという。

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