「企業はLinuxサーバーでコスト削減に成功しているが,デスクトップのWindowsからLinuxへの移行でコスト削減を期待すべきではない」。米Gartner社はこのような調査結果を米国時間9月9日,明らかにした。企業は,どのような移行を考慮する場合にも,移行コスト以外にTCOを重視しなければならないという。

 Linuxは,ハードウエアの要件が低く,クライアント・オペレーティング・システムが低価格なため初期コストは低い。しかし,企業は,人件費,トレーニング,外部サービスなどのその他の経費を考慮する必要がある。

 同社によれば,大半のサーバーは,単一のアプリケーションを実行するために設置されている。そのため,Webサーバーといった特定のサーバーを置き換え,Linuxを実装するのは比較的容易である。しかし,デスクトップ環境では,多様なアプリケーションがさまざまな組み合わせで利用される。そのため,PCのプラットフォーム移行にかかるコストに,Windowsアプリケーションを置き換える必要が加わるためにコストが高くなる。

 Linuxに移行する企業は,ハードウエア購入コストがユーザー1人につき年間80ドル,ソフトに関しては,平均74ドル節約できるという。同社は,Microsoft OfficeからSun社のStarOfficeのWindows版と無料のOpenSource.orgスイートに置き換えただけでも同様のコスト削減が可能になるとしている。

 しかし,限られた状況下ではあるが,PCデスクトップのLinuxへの移行にも有益な場合があるという。同社は,データ入力,コール・センター,銀行窓口といった用途や機能が限定される場合は,Linuxへの移行を検討する価値があるとしている。また,Windows 95,同98などの旧バージョンを利用している企業は,独立系ソフト・ベンダーとサード・パーティのサポートが終りに近づいているため,Linuxに移行することにより,新しいWindows 2000やWindows XPを使う企業よりもコスト削減につながるという。

 また同日,米Forrester Research社も大中規模の企業において,LinuxよりもWindows開発環境の方がコストが低いとする調査結果を発表している。

 Windowsと.NET開発ツールをLinuxとJ2EEベースのツールと比較すると,Windowsを使ってカスタムのWebベースのアプリケーションを開発する大規模な企業は,アプリケーション開発,その後3年間のメインテナンスとサポートにかかる費用を28.2%節約できた。中規模の企業も,開発とサポート環境にWindowsと.NETを利用した場合におよそ25%の削減が可能になる。

 同社は,このコスト差が生じる要因として,高価なJ2EEのライセンス費用,データベース,J2EE/Linux環境におけるアプリケーション開発にかかる時間を挙げている。

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