米IBMの研究開発部門IBM ResearchとUniversity of Texas(テキサス大学)は,毎秒1兆回の演算が可能なプロセサを共同開発する。IBM社が米国時間8月27日に明らかにしたもので,2010年には完成できると見込む。

 同プロセサは,テキサス大学の研究チームが考案した「Tera-op Reliable Intelligently adaptive Processing System(TRIPS)」アーキテクチャをベースとし,「単一のLSIでスーパーコンピュータ並みの性能を達成できるよう設計してある」(同社)という。

 TRIPSアーキテクチャは“ブロック指向実行”と呼ばれる考えに基づいている。一般的なプロセサが1度に数個の命令しか実行しないのに対し,TRIPSプロセサは一連の実行ユニットに割り当てられた演算の大きな“固まり”を処理する。こうすることで,より多くの命令を同時に実行可能となり,その結果,より高い性能を実現できるという。

 同社とテキサス大学の開発チームは,30カ月かけてプロセサ/動作システムの試作品を開発する計画である。同プロセサは2億5000万個のトランジスタで構成され,「分割された独特の構造を持つキャッシュを備えているので,従来手法を使ったプロセサより性能を高められる」(同社)。プロセサの動作周波数は500MHzで,演算速度は1クロック当たり16命令。試作システムには最大4個のプロセサ・コアを接続できる。したがってシステム全体の演算速度は毎秒320億回となる。

 開発チームでは,「最終的に動作周波数10GHz,演算速度毎秒1兆回以上というプロセサが実現可能なことを示す」としている。

 なおTRIPS試作システムの開発作業に対し,米国防総省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)が総額1110万ドルの資金を助成する。

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