米Sun Microsystemsをはじめとする数社が,電子トランザクションを連携させるWebサービス仕様フレームワークである「Web Services Composite Applications Framework(WS-CAF)」を米国時間7月28日に出版した。数週間以内に,World Wide Web Consortium(W3C)またはOASISに提出される。

 WS-CAFは,複数のWebサービスを組み合わせて利用するときに発生する問題を解消するとともに,情報共有とトランザクション工程をサポートするために設計されている。同フレームワークは,Web Service Context(WS-CTX),Web Service Coordination Framework(WS-CF),Web Services Transaction Management(WS-TXM)の3つの仕様で構成される。

 出版に携ったグループには,Sun社を始めてとして,Oracle,Arjuna Technologies,富士通,IONA Technologiesが名を連ねる。

 Webサービスは,プログラミング技術と分散されたシステム間における情報共有を簡単にするXMLの標準セットを意味する。情報技術プロバイダは,アプリケーション間のデータ・フォーマッティングとデータ送信で基本的なWebサービス標準を使ってきた。しかし,セキュリティ,トランザクション,信頼できるコミュニケーションといったより複雑なシナリオと要件に対応するために,過去2年間にいくつかの標準が提案されてきた。

 3つの個別の仕様で構成されるWS-CAFは,区分的なビジネス工程において,多数のマシンを介したトランザクションの調整を行なうメカニズムを提案する。仕様の作者は,Webサービス間のインタラクションを簡略にすることにより,企業によるビジネス・アプリケーションとWebサービス統合の促進を狙っている。

 WS-CAF仕様は,複数のプロバイダによるWebサービス・アプリケーションが,トランザクションに関する重要な情報を共有できるように,事前にシステムを設定する手段を提供する。たとえば,WS-CAFをベースとした管理ツールにより,ユーザーがオンラインで休暇向けの予約を行なう場合に,3つの異なるサイトで調整しながら旅行,車,ホテルの予約が同時にできるようになる。

 Iona社の技術主任担当のEric Newcomer氏は,「現行のビジネス・システムでは,異なるマシン上で実行中のトランザクションの状況を共有する手段がある。WS-CAFは,異なるプロバイダ間のトランザクション状況の共有機能を標準化することにより,相互運用性の改善を狙うものである」と説明する。

 WS-CAFを構成する3つの仕様の主な特徴は次の通り。

・Web Service Context(WS-CTX)
 簡単なコンテクスト管理に向けた軽量のフレームワーク。タスクに関わるすべてのWebサービスは,共同の結果に関してコンテクストの共有と情報の交換が可能になる。

・Web Service Coordination Framework(WS-CF)
 コンテクストの増加とライフサイクルを管理するメカニズム。特定のトランザクションに関わるWebサービスに結果メッセージの通知を提供する。

・Web Services Transaction Management(WS-TXM)
 複数のトランザクション・マネージャが利用可能な,相互運用性をもつ3つの個別のプロトコルで構成する。参加アプリケーションが交渉してどのように振る舞うかを決定するために,複数のトランザクション・モデルをサポートする。実行環境は,CORBA,JavaBeans,.NET,Java Message Service,またその組み合わせで動作する。

 WS-CAFには,新しいトランザクション・プロトコルの実装は必要ない。WS-CAFフレームワークは,OASIS Business Transactions ProtocolといったWS-TXM向けに定義されたプロトコル以外にも,任意のトランザクション・プロトコルが使用できる。同仕様の詳細は,WWWサイトに詳しい。

 ちなみに,日立は同仕様に賛同を表明しているが,Webサービス標準を支配しているIBMとMicrosoftは,同グループに参加していない。

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