米IDCが米国時間7月17日に,2003年第2四半期の世界パソコン市場に関する調査結果を発表した。それによると,世界のパソコン出荷台数は3320万台で,前年同期に比べ7.6%増えたという。この伸び率は2000年末以降で最も高く,これで4四半期連続のプラス成長となった。

 出荷台数の増加率が事前予測(前年同期比4.1%増)を上回った理由についてIDCは,米国と欧州市場における価格低下で販売が伸びたことと,アジア地域の需要に対するSARSの影響が限定的だったことを挙げている。

 地域別にみると,米国では価格低下の効果により,出荷台数が8.1%増と予測を超えた。消費者分野が貢献したが,政府分野も予想以上の回復を示した。また,企業分野にも需要復調の兆しがある。

 欧州/中東/アフリカは,価格低下が需要を刺激し,事前予測をわずかながら上回ったほか,ノート・パソコンが引き続き好調だった。最も健全な状態が続いているのは中小企業分野である。消費者分野はノート・パソコンの人気が高く,需要は安定している。企業分野は依然として慎重だ。

 日本では出荷台数がやや持ち直した。ただしIDCは,「前年は消費者が興味の対象をパソコンからサッカー・ワールド・カップに移したため,パソコン出荷台数が落ち込んだ。その反動で状況が改善したようにみえる」と指摘する。

 アジア太平洋地域は,SARSの影響から予想以上に早く立ち直り,主要市場で出荷台数が予測を超えた。伸び率はわずかながら前期より縮小したが,2003年後半には回復すると見込む。

 メーカー別にみた場合の主な状況は以下の通り。

・米Dell Computer:
 非常に好調な四半期で,出荷台数ベースの市場シェアで1位になった。世界市場における出荷台数は28.9%増と,市場全体の伸び率(7.6%増)より20ポイント以上高い値を出した。

・米Hewlett-Packard(HP):
 世界市場と米国市場の両方で事前予測値を超えた。積極的な価格設定が消費者分野の販売を伸ばし,企業分野でも同様の結果となったことが好調の要因という。

・米IBM:
 出荷台数が米国市場で12%増,欧州市場で20%以上増えた。

■表1 2003年Q2の世界パソコン市場におけるトップ5メーカー別出荷台数(速報値,単位:1000台)
                     2003年Q2    市場       2002年Q2    市場       伸び率
順位 メーカー        出荷台数    シェア     出荷台数    シェア

1    Dell             5,931      17.8%      4,602      14.9%      28.9%
2    HP               5,376      16.2%      4,743      15.4%      13.3%
3    IBM              2,184       6.6%      1,952       6.3%      11.9%
4    Fujitsu Siemens  1,277       3.8%      1,192       3.9%       7.1%
5    東芝             1,032       3.1%        931       3.0%      10.8%

     その他          17,432      52.5%     17,473      56.6%      -0.2%
     合計            33,232     100.0%     30,893     100.0%       7.6%

注:出荷台数は直接販売/チャネル販売をブランドごとに集計。
    デスクトップ・パソコン,ノート・パソコン,2万5000ドル未満のIAサーバーを含む。
    ハンドヘルド・パソコンは含まない。
    HP社の数字には米Compaq Computerのデータを,
    Fujitsu Siemens社の数字には富士通のデータを含む。

出典:IDC(2003年7月16日)
■表2 2003年Q2の米国パソコン市場におけるトップ2メーカー別出荷台数(速報値,単位:1000台)
                     2003年Q2    市場       2002年Q2    市場       伸び率
順位 メーカー        出荷台数    シェア     出荷台数    シェア

1    Dell             3,784      31.5%      3,013      27.2%      25.6%
2    HP               2,290      19.1%      1,987      17.9%      15.2%

     その他           5,922      49.4%      6,093      54.9%      -2.8%
     合計            11,995     100.0%     11,094     100.0%       8.1%

注:トップ5メーカーについては,Gateway社が7月24日に2003年第2四半期決算を出した後に発表する。
    出荷台数は直接販売/チャネル販売をブランドごとに集計。
    デスクトップ・パソコン,ノート・パソコン,2万5000ドル未満のIAサーバーを含む。
    ハンドヘルド・パソコンは含まない。
    HP社の数字にはCompaq社のデータを含む。

出典:IDC(2003年7月16日)

 なお同日HP社は,IDCの発表した調査結果に対してコメントを出した。その内容は以下の通り。

 「2003年第2四半期もまた,Dell社と当社の2強による競争が続いている。両社はほかの集団を引き離し,今後も成長する。上位2社の差は50万台強で,世界全体の出荷台数に比べると小さな値だ。日数に換算すれば,2日未満の違いに過ぎない」(HP社)

◎関連記事
2003年Q1の世界PC出荷台数は前年同期比3%増,「2ケタ成長は2004年から」
「2003年Q1の世界PC出荷台数は前年同期比5.5%増,米Dellが首位を奪還」,米Gartnerの調査
2003年Q1の世界パソコン市場はわずかに成長の見込み,「ただし楽観視は禁物」
「2003年の世界パソコン出荷台数は前年比6.9%増」,米IDCが予測を下方修正
「5月にノート・パソコンの売上高がデスクトップ・パソコンを初めて上回る」,米調査より
「2003年Q1の世界ノートPC市場,当社が2四半期連続首位に」,米HPが米IDCの調査結果を引用
「2003年の世界IT支出は前年比約1%増,緩やかな回復基調に入る」,米IDC
「企業のIT支出,今後1年間で平均5.6%増額予定」,米誌の調査

[発表資料(IDC)]
[発表資料(HP社)]