「米Oracleによる米PeopleSoftの敵対的買収計画は依然としてその行方が不透明だが,ここでOracle社に対抗してPeopleSoft社買収を申し出るベンダーはいないだろう」――などとする調査結果を,米Gartnerが米国時間7月11日に発表した。
Gartner社は,米Microsoftや米IBM,米Hewlett-Packard(HP)といった同市場における大手ベンダーがPeopleSoft社を買収した場合のメリットとデメリットについて分析した。その結果,「一部のユーザーには,Oracle社以外のベンダーの立候補を期待するものもいるが,現在のインフラ市場やアプリケーション市場の状況から考えて,『白馬の騎士』は登場しない可能性が高い」(Gartner社)との結論に達した。
しかし,Gartner社バイス・プレジデント兼リサーチ・ディレクタのBetsy Burton氏は,今回のこの騒動が,ほとんどのベンダーの今後2年にわたる戦略を大きく左右することになると指摘する。「従ってアプリケーション・ユーザーは,現在契約しているプロバイダが今後のサポートをどうするつもりなのか,よく見極める必要がある」(Burton氏)
企業はこの騒動の行方を傍観するのではなく,Oracle社の敵対的買収計画の結果にかかわらず,どのような行動をとるべきか最良の方法を考えなければならない。またGartner社は,「短期的将来を考えた場合,企業によって採るべき道は異なる」と忠告する。「これからPeopleSoft社とJ.D. Edwards社のERPやCRMなどのアプリケーションを導入しようと考えている企業は,すでにこれらのアプリケーションを使用していたり,アップグレードを考えている企業と,判断が違うはずだ」(Gartner社)
なおGartner社は,Oracle社のPeopleSoft社買収とPeopleSoft社の米J.D. Edwards買収がどちらの結果に転ぼうとも,ベンダーの勢力図は変わらないとみている。「2002年における企業向けアプリケーション・ソフトウエア(EAS)の世界市場で,新規ライセンス収入ベースの最大シェアを獲得したのはドイツのSAPだった。両買収計画が成功したところで,SAP社の地位は揺るがないだろう」(Gartner社世界ソフトウエア・リサーチ・グループ部門バイス・プレジデントのTom Topolinski氏)
■2002年におけるEAS市場のトップ・ベンダー別シェア(新規ライセンス収入ベース) ベンダー 2002年のシェア 2001年のシェア (%) (%) ---------------------------------------------------------------------- SAP(ERP,SCM,CRM) 19.6 17.0 Siebel(CRM) 7.1 9.0 Oracle(ERP,SCM,CRM) 6.1 6.8 PeopleSoft(ERP,SCM,CRM) 4.9 5.1 Sage(ERP,CRM) 3.5 2.9 Microsoft(ERP,SCM) 2.7 2.3 J.D. Edwards(ERP,SCM,CRM) 2.4 2.0 ---------------------------------------------------------------------- 出典:Gartner社
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