米SCO Groupは米国時間6月16日に,米IBMの「『UNIX System V』ソース・コードをベースにしたソフトウエアを利用および販売する」ライセンスを取り消したと発表した。IBM社のUNIX系OS「AIX」がこれに該当する。

 SCO社は,IBM社がLinux事業を推進するために,UNIXソフトウエアのライセンスを不正利用したとして,3月6日に訴訟を起こした。UNIXソフトウエアのコードを第三者に開示することを禁じているライセンス契約にIBM社が違反したというもの。

 IBM社はもともと,1985年2月に米AT&TからUNIXのライセンスを取得した。しかし,1995年にSCO社がUNIXとUnixWareの権利をAT&T社から買い取り,UNIX事業に関するソース・コード,ソース・ドキュメント,ソフトウエア開発契約,ライセンス,知的財産を取得。これによりSCO社は「もともとAT&T社のBell Laboratoriesが米Hewlett-Packard(HP),IBM社,米Silicon Graphics,米Sun Microsystemsなどに供与したライセンスの利益は,SCO社が継承する」と主張している。

 SCO社は提訴の際,IBM社に反競争的行為の停止を求める通知を送付しており,IBM社がこれに応じない場合,IBM社がこの通知を受け取って100日後に,ライセンスを無効にするための権限を行使することもあり得ると警告していた。

 「IBM社が当社の要求に応じないまま,6月13日午前0時の期限を迎えた。IBM社がAIXを利用および販売する権利を失った今,AIXはUNIX System Vのソース・コードをベースにした“無認可”の製品だ。この期限をもって,AIXユーザーは合法とみなされなくなる」(SCO社)

 SCO社はまた,IBM社に対する訴訟に関して,ユタ州の米連邦地裁に修正案を同日提出した。同修正案では,IBM社がAIXのあらゆる利用および販売を停止し,UNIX System Vソース・コードのすべてのコピーを廃棄または返却するよう,裁判所に本案的差止命令を求めている。さらに,数十億ドルの損害賠償も請求する。

 なお,SCO社の今回の発表に対し,IBM社が声明を同日発表している。「当社のUNIXライセンスとLinuxに向けたSCO社の攻撃は明らかに,当社の顧客とオープン・ソース・コミュニティのあいだに懸念,不安,疑念を作り出すことが目的だ。当社が所有するUNIXライセンスは恒久的で,ライセンス料もすべて支払い済みである。失効することはありえない」(IBM社)。またIBM社は,AIXの開発,出荷,サポートを継続することを明言した。

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[発表資料(1)]
[発表資料(2)]