米IBMが,カスタムLSI事業の対象範囲をASIC設計以外に拡張する計画を米国時間6月16日に発表した。IBM社では,「さまざまな製品を用意することで,顧客がカスタム化ソリューションを作成する際の期間を短縮し,経費や設計面の複雑さを軽減する」としている。
この計画で提供する製品の一例として,同社はネットワーク・システム向けカスタムLSI「Customized Control Processor(CCP)」について明らかにした。構成済みのコンポーネントを数多く搭載しながら,顧客の求める仕様に合わせるための余裕も残してあるという。同LSIの技術的な詳細については,カリフォルニア州サンノゼで開催中のEmbedded Processor Forumのなかで,同社が6月18日に「'CCP' Customizable Control Processor」という論文で発表する。
事業拡大計画について,IBM社MicroelectronicsカスタムLSIソリューション担当副社長のTom Reeves氏は,「当社は単なるASICサプライヤにどどまることなく,カスタム・ソリューション・プロバイダを目指している」と説明する。
「1つのLSIにより多くの機能を集積し,業界のどの企業よりも優れた製品を作ることから,当社はASIC分野でトップに立っている。しかし,ASICは万人向きではない。そこで,要求にぴったり合うソリューションの製作に協力するという当社の姿勢を,通常ASICの利用を検討しない顧客に知ってもらいたい」(同氏)
同社によると,「電子機器メーカーの多くは製品を差別化するため,既成品のLSIではなくカスタムLSIを利用するようになっている」。ところが,「小規模な回路や新素材は,カスタムLSIの設計を困難にし,経費増加,設計期間の長期化,リスク増大を招く」(同社)という。
「顧客は差別化と複雑さのバランスをより良くしようとしている。当社は新しいカスタムLSIを提供することで,この要求に応えていく」(同社)
なお米メディアの報道(CNET News.com)によると,CCPは開発速度を高速化するためIBM社のプロセサ・コア「PowerPC 405」をベースに構成しており,ゼロからコアを設計する必要がないという。「ASCIの設計には18カ月~24カ月かかるが,CCPは6カ月から12カ月で市場投入できる」(Reeves氏)
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