米American Management Association(AMA)は,企業における電子メール管理に関する調査の結果を米国時間5月28日に発表した。同調査は,米国1100企業の雇用主に対して実施したもの。調査により,大半の雇用主は,電子メールの危険,規則,責任に関して従業員の教育に失敗していることが明らかになった。

 電子メールは,会社を舞台とする訴訟,取締調査において重要な役割を果たしている。差別,セクハラ,独占禁止法の訴訟における主な証拠として,正式に採用されており,回答者の14%が法廷または取締機関によって従業員の電子メールの提出を求められた経験があることが分かった。2年前には5%だった。

 法廷や取締機関の調査が増加しているのに反して,多くの雇用主はビジネスに関する電子メールの記録の管理を十分に行なっていない。電子メールの保存と削除に関するポリシーを文書化して用意している雇用主は34%だけだった。2000年には,電子メール保持を怠ったために,ウォールストリートの5つの委託売買業者が830万ドルの罰金を課せられている。

 AMAが発表した「2003 E-Mail Rules, Policies and Practices Survey」と題する調査結果によれば,電子メールを監視している雇用主は52%で,4分の3は電子メールに関するポリシーを文書化している。22%は,電子メールに関するポリシーに反したことを理由に従業員を解雇した経験があるという。

 「大半の雇用主は,電子メールの危険,規則,責任に関して従業員の教育に失敗している。75%の企業が,電子メールに関するポリシーを文書化して用意しているが,eポリシーの教育を従業員に実施しているのは48%だけだった。電子メールの保持に関するトレーニングの実施に至っては27%だけだった」(ePolicy Institute常任理事のNancy Flynn氏)

 調査の結果,40%を越える雇用主が電子メール・コンテンツによって制御するソフトウエアを利用していることが明らかになった。しかし,電子メールの規則とポリシーを文書化,リスクとポリシー遵守に関する教育,企業が作成した電子メール規則とポリシーを実現するセキュリティ・ソフトを組み合わせているのは23%だけだった。

 また,90%の雇用主が内向けと外向け両方の電子メールを監視するソフトを実装しているのに対し,従業員間がやり取りする内部電子メールを監視する技術を採用しているのは19%に過ぎなかった。従業員間における電子メール通信は,訴訟を引き起こし,不利な証拠として起訴者の武器となる可能性が高いため,内部通信の監視の見過ごしは,将来的に高くつく可能性がある。

 また,その他にも76%が過去1年で電子メール・システムの問題によって時間の損失を経験していることも分かった。35%は約半日,24%は2日間以上だとしている。電子メールによる職場における問題としては,コンピュータ・システムの故障(38%),ビジネスの中断(34%),コンピュータ・ウイルス(33%)が挙げられている。また,5%は電子メールに関連した訴訟の結果,仕事の中断を余儀なくされた,と回答している。スパムによる弊害も報告されている。

 「人数に関わらず,従業員に電子メール・システムへのアクセスを許可するたびに,企業の資産,将来,評判を危険にさらすことになる。規則,ポリシー,教育を組み合わせた戦略的な電子メール管理プログラムの開発と実装により,電子メールによる災害が予期できるとともに,従業員による誤使用,意図的な乱用,重大な失敗に対処でき,電子メール保存に関する責任問題の発生を制限できる」(同氏)

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