Web関連技術の標準化を進めるWorld Wide Web Consortium(W3C)は,W3Cが勧告する仕様に含まれる特許の取り扱い方針を規定するポリシー「Royalty-Free Patent Policy」を承認した。W3Cが米国時間5月21日に明らかにしたもの。

 W3CディレクタのTim Berners-Lee氏は,「Web誕生後の10年間にWebの構築に携わったW3Cメンバーは,“ロイヤルティが必要なくユビキタスに実装可能な標準の策定作業に貢献することで,メンバー自身と世界全体が最大の恩恵を得るだろう”という経営判断を下した」と説明する。「同ポリシーを採用することで,W3Cのメンバーは,広く採用されるであろう最高のWeb向け技術標準の策定作業に今後も専念できる」(同氏)

 W3Cは,Berners-Lee氏の見解をWebサイトで公開している。

 同ポリシーの主要目的について,W3Cは「ロイヤルティ・フリーを基本に,W3C勧告の実装を可能にすること」と説明する。そのためW3C会員は,W3C勧告実装に必要な特許の存在を知った場合,その特許を所有する会員に開示を要求しなければならない。

 Royalty-Free Patent Policyの主な内容は以下の通り。

・W3C勧告仕様の策定作業に参加する全関係者は,基本特許のロイヤルティ・フリーによるライセンス供与に同意する必要がある

・特定の条件において,ロイヤルティ・フリー合意により特定の特許を除外できる

・W3C勧告実装に必要不可欠な特許を知っている者には,特許開示を要求する

・問題解決の際に同ポリシーとの矛盾が発生する特許請求に関しては,例外手続きに従って処理する

 W3C勧告に同ポリシーの条件で利用できない技術が含まれる場合,W3Cは問題調査を行う諮問委員会「Patent Advisory Group(PAG)」を召集する。PAGには該当するワーキング・グループに参加しているW3Cメンバーなどが参加し,特許に抵触しない技術設計の検討,抵触する機能の削除の検討,仕様策定作業の中止などをワーキング・グループに提案するという。最終的にあらゆる方法を検討しても解決できない場合,PAGは該当技術をW3C勧告に採用するかどうかの判断を全W3Cメンバーにゆだねる。

 同ポリシーを策定した特許ポリシー・ワーキング・グループのメンバー企業/組織は以下の通り。米AOL Time Warner,米Apple Computer,米AT&T,米Avaya,Daisy Consortium,米Hewlett-Packard,米IBM,フランスILOG S.A.,米Intel,米Lexmark,米Microsoft,MITRE,米Motorola,フィンランドNokia,カナダNortel Networks,Open Group,米Oracle,英Reuters,米Sun Microsystems,米Xerox,Free Software Foundation,Software in the Public Interest,Open Source Initiative。

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