米国の調査会社Booz Allen Hamiltonは,企業のサプライ・チェーン投資に対する満足度について調査した結果を,米国時間5月20日に発表した。サプライ・チェーンの世界市場は190億ドル規模に成長しているものの,45%の企業がサプライ・チェーンに対する投資の成果に不満を感じているという。

 調査は,年間売上高もしくは資産が10億ドルを超える,北米,欧州,アジア,中南米の企業を対象に実施したもの。COOやCFOなど約200人から回答を得た。

 サプライ・チェーンの向上を目指す取り組みの多くが失敗に終わるのは,「既存の枠組みを変えることなく高価な技術を導入しており,サプライ・チェーンの抜本改革を行っていないから」(Booz Allen社)だという。

 企業が,サプライ・チェーンへの投資に不満を抱いている理由としては,「効率的に予測を立てることができない」(56%),「導入時のトラブルや導入の遅延」(48%),「過度な期待を抱いていた」(44%)などが挙げられた。

 「技術が大きな進歩を遂げたとはいえ,サプライ・チェーンの導入コストは依然高い。またサプライ・チェーンを導入しても,必要以上の在庫を抱えてしまう企業がある。その根本的な原因は,この20年間変わっていない。企業が型にはまったまま,表面的な改善策しか講じないからだ」(Booz Allen社副社長のDermot Shorten氏)

 工場の移転や非中核業務のアウトソーシングなど,抜本的な改革を実施した企業は,サプライ・チェーンの効率化に成功している。一方,新しいITシステムの導入などに終始し, 既存の枠を越えることができなかった企業では,思うような成果が上がっていない。

 サプライ・チェーンのIT投資として最も人気が高いのは「ERP(基幹業務システム)」(71%)である。その他には,「在庫/倉庫管理システム」(54%)や「注文管理システム」(40%)などが挙げられた。企業がIT投資によって期待するのは,「在庫の削減」(80%),「顧客満足度の向上」(71%),「納品システムの改善」(69%)だった。

 この調査から,サプライ・チェーンの向上に,企業のCEOが果たす役割が大きいことが明らかになった。サプライ・チェーン管理をCEOレベルの課題とみなす企業は,年間の顧客対応コストを8%,購買コストを5.9%削減していた。一方,より低いレベルの役職がサプライ・チェーン管理を行う場合は,それぞれ4.4%と5.0%の削減にとどまった。

 また,サプライ・チェーン管理に対する投資額と,企業の満足度は比例している。サプライ・チェーンに対する投資額が2500万ドル以上の企業のうち,「予想以上の成果が得られた」とする企業は21%だった。一方,投資額が100万ドル以下の場合,同様の回答をした企業はわずか5%だった。

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