「米国経済の急速な回復が見込めないことから,2003年における米国IT業界の人材需要は軟調に推移するだろう」。米国のIT業界団体であるITAA(Information Technology Association of America)が米国時間5月5日,米国のIT雇用状況に関する調査結果を発表した。

 調査は,米国におけるIT企業と非IT企業の人事部長400人を対象に,3月27日~4月14日にかけてアンケートを実施したもの。

 今後12カ月間におけるIT職の新規採用予定数は49万3000人である。2002年始めの採用予定数110万人,2000年始めの同160万人と比べると桁違いに低い数値である。また,「求人数は今後12カ月間に横ばい,または減少する」と予測した回答者は67%に達した。

 多くの企業が,国外の労働力を利用し始めている。海外に事業の一部を移したIT企業は12%,非IT企業の場合は3%だった。大企業ほどこの傾向が強く,大企業の22%が海外へアウトソーシングしている。また今後12カ月間に,「海外へアウトソーシングを予定,あるいは検討中」のIT企業は15%,非IT企業の場合で4%だった。

 既に海外へアウトソーシングしている企業をみると,アウトソーシングしている業務は「プログラミング,もしくはソフトウエア開発」が67%,「ネットワーク設計」が37%,「WWW開発」が30%だった。

 2003年第1四半期における米国IT職の増加率は1%未満だった。新たに8万6000人が雇用されたが,2002年に最も採用数が少なかった第4四半期の9万7000人を下回る。

 ITAA会長のHarris N. Miller氏は,企業の海外アウトソーシングが増加している要因として,「IT製品の小型化,広帯域接続の普及,コスト削減の必要性など」を挙げている。

 その他の主な調査結果は次の通り。

・米国中西部と西部の企業ほど,海外へアウトソーシングする可能性が高い

・過去12カ月間にIT職の報酬を変更しなかった企業は74%。変更した企業のうち,給与を減らしたのは8%

・2002年の雇用数が,採用予定数を満たすか,越えた企業は91%

・過去12カ月間に,非IT企業の雇用と解雇は約25%減少した

・IT企業の方が,非IT企業より給与を減らす可能性が高い

・過去12カ月間に,IT企業による人員削減は約50%減少し,雇用は横ばいとなった

 Miller氏は,「IT分野の求人数が経済の成長を反映しているのだとすれば,あまりさい先がよくない。人員削減を行う企業が大幅に減ったのは,既存事業や新規事業を手掛けるのに十分な社員数を確保していることのあらわれだろう」と説明した。また同氏は,「ほとんどのIT職は給与が減少しておらず,高レベルの技術サポート担当者を増やす企業もあるなど,前向きな要素もいくつかある」とつけ加えた。

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