「米国では,インターネットの世界でストーキングを行う“サイバー・ストーカ”が増えている」などとする調査結果を,インターネット上での安全を推進する非営利団体Wired Safetyが米国時間4月17日に明らかにした。

 Wired Safetyが初めて実施した調査により,女性が最も被害に遭いやすいことがわかった。しかし,女性のサイバー・ストーカも増えている。また,子供による他の子供のストーキングや,中東の出身者など特定の人種グループを狙ったストーキングが増加傾向にあるという。このようなインターネット上のストーキングが現実の世界へと場を移し,悲劇的な結末を迎えることも少なくない。

 インターネット犯罪を扱う弁護士のParry Aftab氏は,「盗んだ個人情報を悪用する“なりすまし犯罪”が増加している。また,出会い系サイトを利用する人が増えており,関係がうまくいかなかった場合に被害に遭うことが多い」と説明した。サイバー・ストーカは,トロイの木馬などのウイルスを利用して,持ち主に知られることなくパソコンに侵入し,情報を盗み出すという。

 同氏は,「サイバー・ストーカから身を守るには,他人にパスワードを教えない,オンラインで個人情報を提供しない,などの予防策が重要」とアドバイスした。

 米国における法規制も動きをみせている。「1998年に,インターネット上のストーキングや嫌がらせ行為を違法とみなす州はわずか16州だった。しかし現在は,ほとんどの州で違法行為になっている」(同氏)

 しかし同氏は,風向きが変わりつつあることを懸念している。米レコード工業会(RIAA)が米Verizon Communicationsを相手取って起こした訴訟では,「Verizon社は,米デジタルミレニアム著作権法(DMCA:Digital Millennium Copyright Act)に従い,ユーザー情報を提示する義務がある」と主張していた。米連邦地裁は1月23日,RIAA側の主張を認める判決を下している。

 「本来は,音楽の違法コピーが論点のはずだった。しかしこの判決によって,誰でもしかるべき手続きを踏めば,インターネット・ユーザーの個人情報を入手できることになってしまう。つまりISPは,要請された個人情報の提出を義務づけられる。インターネットを利用する米国人のプライバシ保護と安全は,Verizon社が控訴審で勝てるかどうかにかかっている」(同氏)

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