米IBMは米国時間4月4日,自己管理/自己修復機能を備えた自律型コンピューティング・システム(autonomic computing systems)の構築を支援するアーキテクチャを発表した。ロイヤリティ無料で提供する。異なるサプライヤによる技術を組み合わせ,複雑な情報システムを自動管理するプロセスを容易に実装できるようにすることを狙う。

 今回発表したアーキテクチャは,IT環境の変化を監視,分析,対処するための構築済み制御ループの概略を示したもの。これらのループは,システムから情報を収集して判断を下し,必要に応じてシステムを調整する。これにより,自律型コンピューティング環境を実現する。

 自律型コンピューティング環境では,デスクトップ・パソコンからメインフレーム,ソフトウエア,ミドルウエアといったシステムや各部品すべてが設定,修復,最適化,保護を自身で実行する。自己管理だけでなく,相互管理も行う。エンドユーザーは複雑な作業を実感することなく,システムを利用できる。

 アーキテクチャのベースとなるのは,Open Grid Systems ArchitectureやApplication Resource Measurement(ARM)といった新たな標準規格である。IBM社は,パートナ企業,顧客,標準規格関連団体と協力し,アーキテクチャの普及を図るとしている。

 またIBM社は,このアーキテクチャをベースにしてITシステムに自己管理能力を追加するための4種類の技術を,開発者に提供する。主な内容は以下の通り。

・トラブル検出向けのログおよび追跡ツール:各種のシステム部品のログ・データを共通のフォーマットにまとめることで,管理者が容易にシステムのトラブルの原因を検出できるようにする。

・ABLE(Agent Building and Learning Environment)ルール・エンジン:ABLEは再利用可能な学習と推論のコンポーネント・セット。個人や企業が抱えるナレッジの共有を可能にする。

・IBM社Tivoli事業が開発した監視エンジン:自己復旧機能を取り入れており,リソースの停止や潜在的トラブルを検知して,自動的に修復を行う。今夏にベータ版をリリースする。今年中に「Tivoli Monitoring」と組み合わせて出荷する計画である。

・異なる複数環境に対応した負荷管理:ARM標準技術を利用する。レスポンス時間の測定などからシステムの障害を検出し,パフォーマンス目標に応じてリソースを調整する。

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