「ソフトウエアの著作権保護に注力すれば,雇用,ビジネス機会,税収を創出し,低迷する景気にテコ入れできる」。ソフトウエアの不正コピーを監視する業界団体Business Software Alliance(BSA)が米国時間4月2日,違法コピー率の削減が世界経済に与える影響について調査した結果を発表した。
BSAが,世界IT市場の98%を構成する57カ国を対象に調査を実施したところ,ソフトウエアの40%が違法にコピーされていることが分かった。この違法コピーの割合を30%まで削減することで,雇用口を150万,支出を4000億ドル,税収を640億ドル創出できるという。
BSA議長兼CEOのRobert Holleyman氏は,「起業家が,開発したプログラムなど独自の技術から正当に利益を得ることができれば,その会社は成長し,雇用を生みだせる。また,その会社の製品によって地域経済の支出と税収が増加する。税収は公共サービスの向上に活用されるだろう。このように,知的財産権の確実な保護は創造性を育み,企業,政府,従業員にさまざまな恩恵をもたらす」と,説明した。
BSAによると,調査対象となった国の約3分の2は,1996年以降,違法コピー率を10ポイント減らすことに成功している。「さらに10ポイント削減することは,決して非現実的ではない」(BSA)。全世界で違法コピーの割合を1ポイント減らすだけでも,新たな税収を60億ドル創出できるという。
経済協力開発機構は,世界における違法コピー率を10ポイント削減することで生まれる税収(640億ドル)によって,以下のことが可能になると推測する。
・教育機関向けに3000万台以上のコンピュータを導入
・保健医療を3200万人に提供
・大学進学の機会を690万人に提供
・インターネット接続を2000万人以上に4年間にわたって提供
・初等教育を約400万人の児童に提供
違法コピー率が高い国ほど,その割合の削減によって受ける恩恵は大きい。例えば,違法コピー率が92%の中国は,その割合を今後4年間に10ポイント減らすだけで,IT市場を約5倍の規模に拡大できる。またロシアは,IT市場を2倍の規模に拡大し,ハードウエア,ソフトウエア,ITサービス分野における雇用者数の合計を倍増できるという。
米国や日本など違法コピー率が低い国も,違法コピーの取り締まり強化によって大きな恩恵を受けられる。BSAは,米国が違法コピー率を10ポイント削減することで,GDPを1500億ドル創出できると推計する。
「情報時代を迎えた今,知的財産権の保護が革新と経済成長のカギを握っている。今回の調査により,各国のIT市場の成長の度合いは,その国の違法コピー率を反映していることが分かった」(Holleyman氏)
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