米Motorolaが,記憶容量4Mビットのシリコン・ナノ結晶フラッシュ・メモリーを開発したと米国時間3月31日に発表した。「この技術を使うと,浮遊ゲート技術ベースのフラッシュ・メモリーよりも小型で信頼性が高く電力効率に優れたメモリーを開発できるようになる」(Motorola社)

 浮遊ゲート技術を使ったフラッシュ・メモリーは,現在組み込み用不揮発性メモリーで広く利用されている。しかし,製造プロセス・ルールが90nm以下になると,同技術の使用は現実的でなくなるという。

 「こうしたサイズの浮遊ゲート方式メモリーでは,データの書き込みと消去のために9Vから12Vという高電圧トランジスタに多くの面積が必要となり,価格が上昇する。メモリー・エラーやデータ喪失の恐れがあり,浮遊ゲート方式で信頼性を損なわず高電圧部分を小さくすることはできない」(同社)

 シリコン・ナノ結晶メモリーは,“薄膜ストレージ”と呼ぶ技術の1種で,現在普及している浮遊ゲート・フラッシュ・メモリーの後継技術に相当するという。同社は,このナノ結晶メモリーの製造プロセスを簡素化する手法を開発した。

 同社のDigitalDNA Laboratoriesの研究者らは,既存の真空蒸着装置を使用して,2つの酸化皮膜層のあいだに直径50オングストローム(5nm)ほどのシリコン・ナノ結晶を蒸着させた。そしてこのナノ結晶領域を加工し,保持した電荷を結晶側面からほかのナノ結晶に移動させないようにした。その結果,酸化皮膜に欠陥が1つ存在しても,従来の浮遊ゲート不揮発性メモリーで見られる電荷の完全喪失を起こさなくなり,「信頼性と拡張性の改善が可能となる」(同社)という。

 同社は,90nmプロセスで200mmウエーハ上に試験用メモリー素子を製造した。「製造上の困難は,結晶の成長を適切かつ一定の大きさ/密度で繰り返さなければならない点にある。温度/圧力/時間などの条件をさまざまに変化させることで,既存の装置でも適切にナノ結晶を成長させる手法を編み出した」(同社)

 「この開発が成功したことで,シリコン・ナノ結晶ベースのメモリーを既存の製造装置で経済的に生産できる可能性が出てきた」(Motorola社半導体製品部門の先端製品研究開発研究担当副社長のJoe Mogab氏)

 なお同社の研究者らは2004年の製品化を目指し,ダイ・サイズ縮小と技術強化に焦点を当てて作業を進めるという。

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