米Microsoft，システム設計時に運用／管理要件を考慮可能とするアーキテクチャを発表

和田英一

2003.03.19

　米Microsoftは，ハードウエア／ソフトウエア／サービス・ベンダーを1つのソフトウエア・アーキテクチャに統合する取り組み「Dynamic Systems Initiative（DSI）」を米国時間3月18日に発表した。

　同ソフトウエア・アーキテクチャは，開発／導入／運用というITライフ・サイクル全般に関わる共通規約を提供するために，「System Definition Model（SMD）」上で情報を集約するという。「このアーキテクチャにより，業界標準のハードウエアの性能を生かし，IT業務運営の簡素化／自動化／弾力化を実現できる」（Microsoft社）

　同社は，「低コストな業界標準ハードウエア／OSを大量に導入することが，データ・センターの基本になりつつある」が，「ソフトウエア・アーキテクチャやアプリケーション・モデルは，急速に発展しつつある近代的な分散システムに追いついていない」と説明する。また，IT支出の70％がシステム維持／運用に使われており，新機能の導入より既存機能保守の方が重視されているという。

　「今日のアプリケーション設計では，システム運用は後回しになっている。開発者は，アプリケーションの特性やデータ・センターの要求を簡単に表現できる手段を持っていない。IT管理者には，要望を開発作業に戻して反映させるのに役立つツールが不足している」（同社）

　SDMは，データ・センターのポリシーに合わせたアプリケーション運用に関し，必要事項を把握／一元管理するXMLベースのモデルで，開発／導入／運用作業間で明確な意思疎通を実現できるという。「SDM対応ツールを使用すると，IT管理者はデータ・センターの標準や開発ポリシーを明確に定義可能となり，アプリケーション設計時に運用面の要求事項を開発者に提示できるようになる。さらにデータ・センターにおいては，SDM対応OSにより，作業負荷や業務上の必要性の変化に応じ，使用するリソースとアプリケーションを自動設定／動的変更が可能となる」（同社）

　「ITライフ・サイクル全体で必要とされる運用上の問題に対応可能な動的システムを実現することで，顧客が業界標準のハードウエアの優れた経済性を活用し，大きな生産性向上とコスト削減を達成できるよう支援する」（Microsoft社Windowsサーバー・グループ担当副社長のBill Veghte氏）

　同社では，Windows Server 2003でDSIの導入を開始するとしている。さらに，3年から5年後には，「Visual Studio」の将来版や同社製サーバー・アプリケーション，管理ソリューションなどでも同アーキテクチャおよびSDMに対応する予定という。

　Windows Server 2003で提供予定の主な機能は以下の通り。

・Automated Deployment Services：新たな設定／管理ツール

・Windows System Resource Manager：動的にシステム・リソースを管理する機能

・Volume Shadow Copy Services／Virtual Disk Service：ストレージを仮想化する機能

・Network Load Balancing：動的に入力トラフィックを負荷分散する機能

・Windows Server Clustering：可用性／拡張に優れたサービスを提供する機能

・Virtual Server：機能集約／システム移行に使用する仮想マシン技術

　なお，以下の企業がDSIに賛同を表明している。米Centrata，米Computer Associates International，米Consera Software，米Dell Computer，米EDS，米Hewlett-Packard，米Opsware，カナダThink Dynamics。

　またMicrosoft社は同日，Windows Server 2003用のDSI対応サーバー設定／管理ツール「Automated Deployment Services（ADS）」のベータ版公開を発表した。「ADSを使用すると，さまざまなカスタム化を施したMicrosoft Windows Serverのシステム・イメージ数100種類を，迅速かつ自動的に展開できるようになる。現在こういった処理には数日から数週間かかるが，ADSだと数分で済む」（同社）

　ADSのベータ版は，同週中に早期導入顧客に対し提供する。最終版の公開は，2003年第2四半期と見込む。