米国電気電子学会(IEEE)のIEEE 802.11 Working Groupは,無線LAN規格「IEEE 802.11g」を承認した。IEEEが米国時間2月14日に明らかにしたもの。IEEE 802.1g規格が確定するにはあと2回承認を受ける必要がある。最終承認は2003年6月なかごろに,規格公開は2003年7月になると見込む。

 IEEE 802.11 Working Group議長のStuart Kerry氏は,「IEEE 802.11gは,IEEE 802.11bのPHY(ファイ:物理層)を54Mbpsで通信できるよう拡張することにより,5GHz帯を使って54Mbpsで通信するIEEE 802.11aと同等の機能を,2.4GHz帯で実現できる」と説明する。「現在IEEE 802.11bベースの無線LANが普及していて,既存の無線LANをより効率よく運用できることから,通信速度を54Mbpsに拡張するこの取り組みに対する市場の需要はかなり高い」(同氏)

 IEEE 802.11gは,IEEE 802.11bと同じ周波数帯域と搬送周波数を利用する。両規格は混在して運用可能で,IEEE 802.11b対応機器が11Mbpsで動作しているネットワーク上で,IEEE 802.11g機器は54Mbpsで通信できる。「この同時運用可能な能力のおかげで,両規格が混在するネットワークでIEEE 802.11bの通信性能に制限されず,スムーズにアップグレード可能な方策を提供する」(IEEE Standards Association)

 IEEE 802.11g規格のドラフト版のバージョンは現在6.1である。IEEE 802 Executive Committeeは同版について,IEEE Standards Association(IEEE-SA)の実施するスポンサ・レベルの最終無記名投票にかけることを承認した。投票結果は,2003年3月にテキサス州ダラスで開催するIEEE 802.11g Task Groupの会合に報告されることになっている。同会合では,スポンサからの意見を基にして,同規格をバージョン7.0にアップデートする予定という。

 なお,現在いくつかのメーカーがIEEE 802.11g対応製品のリリースを開始しつつあることに対し,Kerry氏は,「IEEEとしては規格が早く採用されるのはありがたいと感じているが,この時期に製品をリリースするのは冒険だ」と述べる。

 「IEEE 802.11gのドラフト版は2003年1月の会合で技術面に変更があった。3月の会合でも,IEEE 802.11のスポンサ組織からの意見の影響で変更が加えられるだろう。互換性を保証し,起りうる相互接続性の問題を避ける唯一確実な方法は,802.11gの最終承認を待つことだ。かなり高い確率で2003年6月には決まる」(IEEE 802.11広報部長のBrian Mathews氏)

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