幹部役員の辞任,膨大な負債,米国ビジネス史上最大の年間損失は,米AOL Time Warner傘下のAmerica Online(AOL)が直面する問題の“序章”にすぎない」――。ブロードバンドが米国におけるインターネット接続の主流になるにつれて,AOL社は今後数年で多額の収入を失う可能性があるという。米Strategy Analyticsが米国時間2月6日に,ブロードバンド市場に関する調査結果とともに発表した。

 Strategy Analytics社Global Broadband Practice部門ディレクタのJames Penhune氏は,「米国のインターネット人口のうち,ブロードバンド・ユーザーの割合は現在わずか25%。しかし,2005年にはインターネットを利用する家庭の約半分が,ブロードバンド接続を導入する見込みだ。ブロードバンド接続のほとんどは,ケーブル事業者や電話通信会社から提供される。AOL社はダイヤルアップ接続で大きなシェアを維持するだろうが,ダイヤルアップ全体の規模は著しく縮小してしまう」と説明した。

 また,AOL社のサービス会員がブロードバンド接続にアップグレードすると,AOL社は数億ドルの会員収入を失うことになる。AOL社の「Bring Your Own Access」では,ケーブル事業者や電話通信会社のブロードバンド接続を導入しているインターネット・ユーザーに月額利用料14ドル95セントで高速版AOLサービスを提供している。ダイヤルアップ接続向けサービスの月額基本料金が23ドル90セントだったので,会員1人がブロードバンド接続に切り替えるたびに,9ドル近い損害が発生することになる。

 「ダイヤルアップ市場の縮小とブロードバンド会員による薄い利ざやを考え合わせると,AOL社が失う売上高は2005年に約10億ドルにのぼるとみられる」(Strategy Analytics社)

■インターネットを利用する米国家庭(単位:100万世帯)

                  2002年  2003年  2004年  2005年  2006年  2007年  2008年

ダイヤルアップ     47.8    46.4    43.4    40.2    35.5    31.1    26.9
ブロードバンド     17.9    25.3    33.3    41.6    49.5    56.9    64.1
合計               65.7    71.7    76.7    81.8    85.0    88.0    91.0

出典:Strategy Analytics社

◎関連記事
米AOLタイムワーナー,会長のSteve Case氏が退任へ
米AOLタイム・ワーナーが2002年Q4と通期の決算を発表,通期の純損失は987億ドル
米AOL Time Warner,決算書の正確性に宣誓も疑問残る会計処理,SECは前上級副社長を調査
米AOL Time Warnerに不正会計疑惑が浮上
「真のブロードバンドで米国のGDPが年間5000億ドル増加する可能性がある」,米Gartner
2002年12月の米国広帯域ユーザー,前年同月比59%増の3360万人以上に
「高速ネット接続の普及で世界の平均オンライン滞在時間が増加」,米ニールセン

[発表資料へ]