米連邦地裁が米Verizon Communicationsに対し,ピアー・ツー・ピア(P2P)のファイル交換サービスのユーザー名を米レコード工業会(RIAA)に開示するよう命じたことについて,Verizon社とRIAAが米国時間1月21日にコメントを発表した。

 RIAAがVerizon社を相手取って起こしたこの裁判で,RIAAは「米デジタルミレニアム著作権法(DMCA:Digital Millennium Copyright Act)に従い,Verizon社はユーザー情報を提示する義務がある」と主張していた。米連邦地裁のJohn Bates判事は21日に,RIAA側の主張を認める判決を下した。

 なおRIAAは2002年7月に,ユーザー名開示を求める召喚状をVerizon社に送付している。Verizon社は「RIAAの召喚状は,DMCAの条件を満たしたものではない。DMCAによれば,著作権侵害となるデータが当社のシステムあるいはネットワークに存在しなければならない。しかし,データは(Verizon社ではなく)ユーザーのハード・ディスク装置にある」とし,RIAAの「無効な召喚状」(Verizon社)に応じることを拒否した。

 「今回の判決は,消費者,サービス・プロバイダ,そしてインターネットの成長に悪影響を及ぼす。『著作権を侵害している』と主張するだけで,法的な手続きをとらずにユーザーの個人情報に完全にアクセスできることになる。電子メールやネット・サーフィン,個人的なファイルのやりとりといったコミュニケーションに,大きな打撃を与えるだろう」(Verizon社副社長兼法務顧問代理のSarah B. Deutsch氏)

 また同氏は,「当社は著作権法を犯したユーザーをかばうつもりはない。しかし,基本的なプライバシの保護を重視している。当社は控訴する意向である」と述べた。

 一方,RIAA会長のCary Sherman氏は,「連邦地裁の判決を高く評価する。インターネット上の違法な音楽配信は音楽家や作詞作曲家などの著作権所有者にとって深刻な問題だ。レコード会社はこの課題を克服すべく,消費者を教育したり,合法的な手段を提供して大きな進展を遂げている。今回の判決により,(ファイル交換サービスの)加入者に連絡を取り,『あなたがしていることは違法だ』と知らしめることができる」と語った。

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