「アジア太平洋地域では,公衆無線LANサービスの足踏み状態が過去2年間続いていたが,ようやく本格的な普及が始まった」。米GartnerのDataquestがシンガポールで現地時間1月13日に,アジア太平洋地域の無線LAN市場について調査した結果を発表した。

 オーストラリア,香港,日本,シンガポール,韓国,台湾の主要6市場において,サービスを提供する通信事業者が軒並み増加している。サービス提供エリアの拡大や使用料金の低価格化なども,普及を後押ししている。

 Dataquest社Worldwide Telecommunicationsグループ担当業界アナリストのAlayne Wong氏は,「大手通信事業者が市場に参入したことで,サービス提供エリアが広がり,一般ユーザーが手頃な料金で利用できるようになっている」,と説明する。しかし一方で,「初期に市場に参入していた新興企業は苦戦を強いられており,市場から撤退したり,業務を縮小する企業も現れている」(同氏)という。

 ソウル,シンガポール,香港,東京,メルボルンといったアジアの主要都市で,公衆無線LANサービスが利用できるようになったことが,普及の追い風となった。現在,通信事業者の多くが空港,商用ビル,飲食店などでホットスポットを提供している。なかでも韓国のKorea Telecomがホットスポットの設置に意欲的で,2003年末までにホットスポットを1万6000カ所で展開する予定だという。

 これまで公衆無線LANサービスは,企業ユーザーが外出先で利用することを当て込んでいたため,使用料金は高額だった。しかし,サービス対象が一般消費まで拡大したことで,料金の低価格化に拍車がかかっている。

 韓国では1時間当たりの使用料金が2.6ドルで,1日の支払い上限は10.6ドルだ。また香港では,使用料金を1分当たり12セントに設定されているため,ふと思いついて利用したいユーザーなどに好評である。

 しかし公衆無線LANサービス市場はまだ揺籃期にあり,すぐに大きな収入を見込むことができない。このため無線LANを,「広帯域接続や携帯電話サービスといった中核的サービスを補足する,低価格な付加価値サービス」として位置づける通信事業者もいる。無線LANだけに注力している企業は今後ますます苦戦を強いられる見通しだ。

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