電子メール・セキュリティ・サービスを手掛ける英国MessageLabsは,「スパム・メールやウイルス・メールが驚異的な勢いで増えている」とする調査結果を,米国時間12月11日に発表した。

 2002年におけるウイルス・メールとスパム・メールの頻度は,ユーザーが受信するメール212通に対して1通がウイルスに感染したメール,同12通に対して1通がスパム・メールである。ユーザーは3秒ごとにウイルス・メールを,0.5秒ごとにスパム・メールを1通受信した計算になる。なお2001年におけるウイルス・メールの割合は,受信メール380通に対し1通だった。

 ウイルス・メールの増加は,「家庭ユーザーや小規模企業の多くが,アンチウイルス・ソフトの利用を怠るなど,セキュリティに対して無頓着であることに起因している」(MessageLabs社)という。

 スパム・メールは2003年も指数関数的に増加を続け,7月頃にはスパム・メールの数が合法的なメールのそれを上回る見通しだ。その後,勢いはややおさまるものの,ユーザーが受信するメールの多くを占めることになる。

 MessageLabs社は「これまで,ウイルス・メールの作成者が使用していた高度なテクニックを,スパム・メールの作成者が利用する傾向が強まっている」と指摘し,スパム・メールの検知が困難になっていることに懸念を示した。

 「電子メールが膨大なビジネスのやり取りを行う窓口となっているにも関わらず,サーバーを適切に保護していない企業が多すぎる。ウイルスやスパム・メールの手口が日増しに巧妙になっており,ユーザーは積極的な自衛策を講じる必要がある」(MessageLabs社チーフ・テクノロジ担当者のMark Sunner氏)

 2002年に顕著だった傾向として,スパム・メールとウイルス・メールをかけ合わせたメールの増加がある。他にも,トロイの木馬を仕込んだメールを特定の企業や個人に送りつけるケースや,送信者の電子メール・アドレスを偽って受信者のコンピュータに入り込み,インストールしてあるアンチウイルス・ソフトを削除する性質のものが増えた。これらの傾向は2003年も続く見通しだ。

 2002年に検出されたウイルスは,長期にわたって被害を与える傾向があった。2002年のウイルス検出ワースト1となった「Klez」は,4月に感染が広がり初めてから現在まで,被害件数をいまだに増やしている。MessageLabs社はこれまでKlezを500万件以上検出しており,11月だけでも42万3000件を検出したという。

 2002年のワースト2は「Yaha」で,6月以降の検出件数は約200万件である。次いで被害が多かったのは,最近発症した「BugBear」。9月以降の検出件数が80万件以上となっている。4位は2001年7月に検出された「Sircam」である。

 ちなみにMessageLabs社は2002年に新種ウイルスを237種類検出しており,「来年はその数がさらに増加する」(同社)と予測している。

 またスパム・メールでは,11月に検出されたばかりの「FriendGreeting」が被害を拡大している。ユーザー宛のオンライン・グリーティング・カードが届いたように見せかけ,大量のメールを送信するインストーラを合法的にダウンロードさせる。MessageLabs社はこれまでFriendGreetingを7万件以上検出しているという。

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