政府におけるオープン・ソース・ソフトウエアの採用に対して,ソフトウエア・ベンダーの団体Initiative for Software Choice(ISC)が米国時間11月26日に,異論を唱えるコメントを発表した。

 ISCはCompTIA(コンピュータ技術産業協会)が中心となり発足した業界団体。米メディア(CNET News.comInfoWorld)によると,CompTIAには米Microsoftが深くかかわっているという。

 今回発表したコメントは,政府が出資する非営利組織MITREが11月6日にリリースしたオープン・ソース利用に関する調査報告書「Use of Free and Open Source Software in the U.S. Department of Defense」(Version 1.2.02)に対する反論である。当報告書は,ベンダー特有のソフトウエアの代わりにオープン・ソース・ソフトウエアを採用することを推奨しているという。

 ISCはこうした方針が,「顧客の選択範囲を制限するだけでなく,ソフトウエア業界全体に損害を与える」(ISC)とし,コメントの中で次のように述べている。

 「ソフトウエア開発が経済,社会そして技術の発展を推進してきたことに議論の余地はない。事実それは,消費者の需要によって実現した革新の最も大きな成功例だ。各種のソフトウエア開発,ビジネス,ライセンシング・モデルの実施を許可することは,ソフトウエア開発を促進する最良の方法であり,公共機関と民間企業を含む顧客がソフトウエアを購入する際の幅広い選択肢を保証する。

 ISCは,(調査報告の)各事例が米国防総省(DoD)の公然たるオープン・ソース・ソフトウエア推奨を示しているとは思わない。DoDはニーズに最も適したソフトウエアを選び,そのソフトウエアを利用する環境に特化した条件を揃えるべきである。また,DoDが行う個別ソフトウエアのセキュリティ検証は,オープン・ソース・ソフトウエアの方が安全性が高いという先入観にとらわれるべきではない。

 調査報告は『もし,DoDにおいてFOSS(無償のオープン・ソース・ソフトウエア)の使用が禁じられるとどうなるか?』といった仮定設問が使われ,『FOSSの禁止は直ちにマイナスの影響を広範囲に及ぼし,DoDで機密性とセキュリティに注力するサイバー攻撃対策グループの活動に支障を与える』と結論づけている。これは間違った設問だ。我々は誰一人として,FOSSの禁止を望んでいない。オープン・ソース・ソフトウエア,混合ソフトウエア,ベンダー特有のソフトウエアはそれぞれ利点がある。役人によって,有望なソフトウエアが競争や評価の対象から取り除かれれば,誰も恩恵を受けることはできない。

 また,GNU General Public License(GPL)などのライセンスは業界の多くの企業が懸念を抱いている問題だ。非GPLコードとGPLコードを組み合わせた場合,それによって生み出されたソフトウエアはGPLに従って扱われることになっている。企業は膨大なリソースを費やして,知的財産と関連ソフトウエアの保護に努めている。GPLソフトウエアと統合された場合,非GPLの知的財産に関する権利と利益はすべて失われる。この点で企業が非常にリスクを嫌い,GPLコードなどと関連するかもしれないソフトウエア開発において,より防衛的な姿勢をとることは無理もないことだ。有償ソフトウエアの開発者は概して,自身の投資を無駄にするような危険をおかしたくはない」

 最後にISCは,「DoD/DISA(米国防総省国防情報システム局)は,DoDにおけるオープン・ソース・ソフトウエアの使用を推進するという不要かつ有害になりうるITポリシーを採択すべきではない」と,コメントをまとめている。

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