米エネルギー省(DOE)は,世界最速のスーパーコンピュータ2台の構築で米IBM社と2億1600~2億6700万ドル規模の契約を結んだ。DOEが米国時間11月19日に記者会見にて契約に関する発表を行う。スパコン2台を組み合わせた演算速度は,最高で毎秒467兆回(テラFLOPS)に達するという。

 この2つのシステムを合わせた演算能力は,先ごろ発表された「TOP500 List of Supercomputers」の500台すべてを合わせた演算能力を上回るという。

 「ASCI Purple」と呼ばれるシステムは,現在最速のコンピュータの2倍に該当する最高100テラFLOPSの演算能力を提供する。同システムは,POWERをベースとした「eServer」システムのクラスタと同社のストレージ・システムで構成される。

 「ASCI Purple」のオペレーティング・システムは「AIX 5L」。IBMの次世代マイクロプロセサ「POWER5」を1万2544個を使用する。これらプロセサは,196台のコンピュータに格納され,メモリー帯域幅は1秒間にDVDの映画3万1200本分に該当する15万6000Gバイトを提供する。すべてのコンピュータは,超高速ハイウェイを介して相互接続される。相互接続の帯域幅は1万2500Gビットになる。平均的なデスクトップPCの40万倍に該当する50Tバイトのメモリー(50兆ユニット)を搭載する予定。

 同スパコンは,ASCI(Advanced Simulation and Computing)プログラムの第5世代のシステムとなる。DOEの国家核安全保障管理局(NNSA:National Nuclear Security Administration)は,地下実験を実施することなく核貯蔵庫を安全に管理するために,同システムを使用して米国が保有する核兵器の経年変化とオペレーションをシミュレートする。

 2番目のスパコンは「Blue Gene/L」と呼ばれる調査向けマシン。現在,政府のASCIプログラム向けにIBMとDOEが新しいアーキテクチャの開発を進めている。完成時には,プロセサ13万個を搭載し,理論上の最高値として367テラFLOPSの演習速度を実現する。データ処理速度は1Tビット/秒で,これは1万台の気象衛星から転送されるデータ量に該当する。

 同システムは,乱気流,材料の経年変化や,高性能爆弾など国家レベルで関心の高い物理現象のシミュレーションといった幅広い科学アプリケーション・スイートの開発と実行に使われる予定。

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