米Texas Instruments(TI)は複数の無線LAN標準に対応するマルチモードWLANソリューションを米国時間11月13日,発表した。同社の「Auto-Band」と呼ぶ技術をベースとする単一LSIによるMAC(Media Access Controller)「TNETW1130」と,システムの参照設計を提供するもの。対応する無線LAN方式は,IEEE802.11a,同802.11b,同802.11b+,同802.11g。
「異なるIEEE802.11物理層間をシームレスに相互接続でき,2.4GHz帯と5.2GHz帯の両方で54Mbpsの通信が利用可能となる」(TI社)
Auto-Band技術を使用することで,TNETW1130を使ったアクセスポイントでは,IEEE802.11a,同802.11b,同802.11b+,同802.11gを同時に運用でき,使用するモードを自動的に切り替えることができる。
TNETW1130のそのほかの主な特徴は以下の通り。
・セキュリティ:従来からの無線LAN用暗号化方式WEP(Wired Equivalency Protocol)に加え,AES(Advanced Encryption Standard)にも対応する。さらに,Wi-Fi Allianceが10月31日に発表した新しい無線LAN向けセキュリティ方式WPA(Wi-Fi Protected Access)をハードウエアで処理でき,IEEE802.11iのドラフト仕様にも対応する。
・サービス品質(QoS):QoS対応用の無線LAN向け拡張MAC規格IEEE802.11eのドラフト仕様で規定されているEDCF(Enhanced Distributed Coordination Function)およびHCF(Hybrid Coordination Function)に対応する。これにより,無線LANで音声データなど,高い通信品質が求められるアプリケーションを実行可能となる。
・拡張性:ファームウエアのアップグレードが可能なので,無線LAN仕様の変更などにも対応できる。
・消費電力:TI社独自の低電力技術を採用し,消費電力の少ないスタンバイ・モードを備える。バッテリの持ちが長くなり,無線LANアプリケーションの消費電力効率を向上できるので,PDAやスマートフォンなどに適しているという。
・インタフェース:PCMCIA,Cardbus,PCI,ミニPCI,USB,Compact Flash,汎用16ビット・スレーブといったインタフェースを内蔵する。
TNETW1130を使用した参照設計は,IEEE802.11gのPCカードおよびアクセス・ポイント,IEEE802.11a/gのPCカード,IEEE802.11a/gのミニPCIカードなど,さまざまな市場の要求に対応するため,複数のモードとフォーム・ファクタで提供する。シングルモードおよびマルチモードのいずれの設定も可能なハードウエア・アーキテクチャを採用するので,「OEMなどはIEEE802.11対応製品で行ったハードウエア開発作業を簡単に再利用できる」(同社)
さらに,TI社の共通ソフトウエア・アーキテクチャを利用することで,プラットフォーム間でのソフトウエアの再利用が可能という。「そのため現在の当社の顧客は,TNETW1130ベースの設計を別のものに変更する際に,ソフトウエアの開発を迅速に行える」(同社)
TNETW1130ベースの参照設計の開発作業用サンプルは,2002年12月に利用可能とする予定。最終製品のリリースは,2003年4月を見込む。2003年第2四半期における量産産品の価格は,IEEE802.11g対応のCardbus用が23ドル以下,IEEE802.11a/g対応のCardbus用は28ドルとする。
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