米Microsoftが米国時間10月8日に,企業の業務を統合するための新しい計画「Jupiter」(開発コード名)を発表した。Microsoft社.NETエンタプライズ・サーバー担当上級副社長のPaul Flessner氏,同社eビジネス・サーバー担当ジェネラル・マネージャのDavid Kiker氏が,Microsoft Exchange Conference(MEC)2002の基調講演で概要とロード・マップを説明したもの。

 「Jupiterで当社のビジネス・サーバーを統合/コンポーネント化し,企業による情報ITエコシステム,従業員,業務プロセスの接続を支援する」(Microsoft社)

 Jupiter計画で開発する一連の技術は,2003年から18カ月かけて,2段階に分けて提供する予定。業務プロセスの管理および監視機能の提供,Business Process Execution Language for Web services(BPEL4WS)といったXML Webサービス標準への対応強化,「Visual Studio .NET」「Office」の統合強化による開発/情報担当者の支援を行う。

 今日のeビジネス・ソフトウエアの問題についてDavid Kiker氏は,「既存のeビジネス・ソフトウエアの多くは,特定の用途に特化しているためほかとの接続ができず,全体的に複雑だ」と説明する。「Jupiter計画は,この問題の解決に真正面から取り組む」(同氏)という。

 「当社の提供するアプリケーションを最適な状態に組み合わせることで,顧客のインフラを簡素化する。同時に,情報/従業員/業務プロセスの接続,分析,対応に向けた包括的かつ標準仕様ベースのソリューションを提供し,広がりのある企業を実現させる」(同氏)

 Microsoft社はJupiterビジョンのもと,「現在同社が提供しているeビジネス・サーバー製品をより統一的な環境に統合することで,密接に接続した業務を実現する」(同社)としている。その環境では,Visual Studio .NETとOfficeの統合,各技術間におけるセキュリティ/導入/管理/監視を実現する機能,企業間での相互接続性確保のためXML Webサービス対応の強化などを提供する。

 同社はJupiterの基本的な設計指針として,以下に示す4点の項目を挙げている。

(1)業務プロセス管理:企業は従業員と業務プロセスで成り立っている。業務プロセスは業務接続の中心に位置するものなので,Jupiterではこれをビジョンの柱に据える。

(2)統合:業務を接続するには,多くのツールや技術が必要となる。Jupiterではこれらを統合し,共通でシームレスに開発/導入/管理作業を行えるようにする。

(3)相互接続性:業務の接続は,システムを構築するハードウエア/ソフトウエアやプラットフォームの種類,使用言語,導入した時期などに関係なく実行する。Jupiterでは,XML Webサービス/アプリケーション,技術アダプタを利用して,これらさまざまなシステム間の接続を実現する。

(4)コンポーネント化:現行のeビジネス・ソフトウエアの多くは,特定用途に向いており,業務を接続する際の柔軟性に欠けている。Jupiterでは,カスタム化したeビジネス・ソリューション構築の主要要素となるXML Webサービス標準を利用し,必要なコンポーネントを提供する。

 Jupiterに対応する第1段階の技術セットは,2003年後半の提供を予定する。業務プロセス管理およびXML Webサービス対応などのサービスのほか,以下の内部/外部統合に対応する。

・プロセス自動化
・ワークフロー
・各種技術の統合
・BPEL対応
・統合開発環境

 第2段階の技術セットの提供は,2004年前半の予定。それまでに対応するすべての機能に加え,以下のサービスに対応する。

・コンテンツ管理
・商取引サービス
・カタログ管理
・キャンペーン管理
・サイト管理
・サイト分析
・ターゲット設定
・パーソナル化
・統合情報ワーカー環境

 なお,Jupiter関連製品の価格とライセンス体系は現在のところ未定。Microsoft社は「後日発表する」としている。

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