Web関連技術の標準化を進めるWorld Wide Web Consortium(W3C)が米国時間10月3日に,「XML Encryption Syntax and Processing(XML Encryption)」および「Decryption Transform for XML Signature(Decryption Transform)」をW3C勧告案(Proposed Recommendations)として発表した。

 XML Encryptionは,XML文書を暗号化する際の手法を規定する仕様である。「データを暗号化することで,機密データを安全に保存/転送できる」(W3C)。なお,米Microsoft,米IBM,米VeriSignが共同で開発し,2002年4月に発表したWebサービス向けセキュリティ仕様WS-Securityでは,XML EncryptionとW3Cの電子署名仕様「XML-Signature Syntax and Processing(XML Signature)」を利用して,Webサービス向け仕様「SOAP」の安全性確保を図っている。

 米メディアの報道(CNET News.com)によると,XML EncryptionについてW3C XML Encryption Working Group議長のJoseph Reagleは以下のように説明しているという。「XML文書を暗号化する方法はこれまでもあった。しかしXML Encryptionでは,文書の一部分に対して暗号をかけられる。たとえば,XMLフォームに入力したクレジット・カード番号だけを暗号化できるのだ」(同氏)

 一方Decryption Transformは,XML文書向けの電子署名仕様。電子署名とは,情報を数学的な暗号化理論を応用して読めない状態にしたり,逆に元の状態に戻したりする技術。データに電子署名を施しておくことで,データの正当性,署名の信憑性などを確認できる。XML文書に署名をするための仕様がXML Signatureであるのに対し,Decryption Transformは署名済みXML文書の復号化に関する処理方法を定めている。

 XML Signatureを使うと,複数の人物がそれぞれ独立して,一つのXML文書の異なる部分に電子署名を施せる。この署名を復号するために必要な仕様がDecryption Transformである。多くの関係者が存在するeビジネスなどでは,“関係者ごとにデータの責任範囲を分担し,それぞれが担当部分に署名を行ってデータの内容を保証する”,といった作業に両仕様を利用できる。

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