「2001年9月の米国同時多発テロ事件以降,情報セキュリティ(IS)に対する支出が大きく増加する傾向がみられる。しかし,企業はその増加分を,ほかのIT予算を削ることでまかなっている」。米Vista Researchが米国時間9月10日に,企業の情報セキュリティ予算などに関する調査結果を発表した。

 調査は290人の企業の意思決定者およびIT購買管理者を対象に,Vista Research社が米Harris Interactiveに依頼して2002年8月に実施したもの。

 それによると,48%が「2001年9月以降IS予算が増加した」と答え,その内の半数以上が「10%以上増加した」と回答した。ただし,「15%を超える大幅増」は21%だけで,そのうちの39%は「セキュリティ支出の増加分は,ほかのIT予算を削って得たもの」という。また,57%は「今後12カ月間にIS支出を増やす計画がある」と回答した。

 同調査では,既存のIS技術に対する満足度についてもたずねた。それによると,意思決定者らの多くは,「アンチウイルスおよびアクセス制御システムに満足している」と回答した。それに対し不満な技術としては,ファイアウオール技術(27%),侵入検知システム(36%)が挙がった。

 そのほかには,VPN(25%),暗号化技術(22%),バイオメトリクス(20%)に対する不満が多く,最も不満が多かったのは無線セキュリティの53%だった。

 「上級ITマネージャや購買担当者,意思決定者にとって,ISは最も関心のある分野だ。しかし,どのベンダーが最適で,革新的なセキュリティ・ソリューションを提供するのかが問題となっている。そして,IT業界の再編が進む今,どのベンダーが長期的に生き残るか,ということも課題なのだ」(Vista Research社調査方法論の上級アドバイザのIgor Stenmark氏)

 同氏によると,IS分野をリードする企業は今のところ確定していないという。調査結果から,米Cisco Systems,米Microsoft,米VeriSignといったごく一部のベンダーだけが,10%以上という有意な支出増加の対象となったことが分かる。

 「IS分野には既存ベンダーが売上を伸ばす余裕がまだあり,新規/既存ベンダーの双方に大きなチャンスが残っている」(Vista Research社上級財務アナリストのMonique Elwell氏)

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