米GartnerのDataquestは,米国におけるブロードバンド普及の影響をモデル化し,この先10年に渡って毎年5000億ドルの割合でGDP(国内総生産)が増加するという予測を米国時間8月26日に出した。「Telecom Regulation Has Failed: Now What?」と題したレポートでは,地域の電気通信規制の問題点やその解消法なども検証している。

 多くの消費者は,ブロードバンドという言葉で現在サービス・プロバイダが提供する一般的な384Kビット/秒のダウンストリーム伝送をイメージする。しかし,Gartner Dataquest社は,家庭まで最低10Mビット/秒のダウンストリーム伝送能力をもつものを“真“のブロードバンドとして定義している。

 同社アナリストによれば,このレベルの帯域幅を実現すれば,低調な技術部門に非常に大きな変化とチャンスをもたらすとともに,全体的により広域に渡る経済にも好機をもたらすという。

 この景気押し上げのボトルネックとなっているのは,家庭までの「最後の200メートル」である。この問題を解消すれば,より帯域幅が広いアプリケーションが普及し,現存のバックボーンを活用することができる。

 「たとえば,広域に渡り消費者に10Mビット/秒の接続を提供すれば,より大きい容量のバックボーン配備が必要になる。新しいネットワークの配備には,継続的に通信機器のアップグレードが必要になる。ネットワーク機器だけではなく数年に渡るユーザー・デバイスの成長もけん引される」(同社の副社長のMartin Reynolds氏)

 “真の”ブロードバンド環境により,かなりの利益がもたらされるが,リスクもある。業界構造の進化とブロードバンド普及の目標を達成するのに必要な巨額の投資などを考慮すれば,大企業にもリスクはある。国を挙げた支援と共通の目標があっても物理的な配備には数年間かかるという。

 「米国と他の先進国において,ブロードバンドの利点を促進する効率的な構想には,公営部門と民間部門の関わり,教育への参加,コンテンツの作成,知的資産保護などが関わってくる」(同社アナリストのRon Cowles氏)

 「ブロードバンドによって実現される好機を考慮して,規制の評価を行い,断固とした態度で行動すべきだ。地域料金の見なおしと設備ベースの競争に基づく競争環境が必要不可欠である。また刺激も必要だ。効果的な活動を行うために,測定可能な目標と測定のプロセスも準備する必要がある」(同氏)

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