米IBMが米国防総省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)から支援を受け,増加し続けるコンピュータの消費電力の問題解決と,ITインフラの冷却/電力供給コストの削減に向けた技術を研究する。IBM社が米国時間8月7日に明らかにしたもの。DARPAはPower-Aware Computing and Communications(PACC)という省電力コンピュータ研究プロジェクトの一環として,IBM社のLow Power Centerに約200万ドルの資金を提供する。

 Low Power Centerは,コンピュータの電力消費に関する技術開発を目的とするIBM社の研究部門。2001年10月に同社が,テキサス州オースチンにある研究所の一組織として開設した。

 「IT業界の拡大にしたがい,冷却と電力供給につぎ込まれるエネルギの量が増え続けている。これにより,顧客の経費が増大し,同時に技術面,環境面,安全面でも問題も生じている」(IBM社)

 同社が引用した業界の調査結果によると,データ・センターの予算の最大25%が,冷却と電力供給に費やされているという。さらに,米エネルギ省が1994年に行った研究では,北米におけるエネルギ消費量の10%がITシステムに使われているという。

 DARPAとの合意によりIBM社は,信頼性を備え電力消費量に配慮したシステムの研究を行い,省電力/高性能なコンピューティング・プラットフォームに利用可能な確実性のある技術を開発する。研究/開発の成果を用い,米BAE Systemsは軍事目的の試作品を作成する予定である。IBM社も社内で試験運用を行うという。

 さらにIBM社は,「PowerPC」プロセサを使ったシステムに向け,消費電力と性能の予測/分析が可能な設計分析ツールの開発を行う。「このツールを使うと,高価で困難な実験を行わずに省電力システムを開発することが可能になり,省電力ハードウエア/ソフトウエアの作成にかかる時間を短縮できる」(同社)

 DARPA PACCプログラム・マネージャのRobert Graybill氏は,「PACCでは,ソフトウエアおよびハードウエアによる総合的な電力管理技術を開発している。その適応範囲は,LSIからシステム全体まで,すべての階層に及ぶ」と説明する。「この取り組みにより,PDAから無人偵察機までさまざまな軍事目的のコンピュータ・システムで,エネルギー消費量を10分の1から100分の1にまで減らせるだろう」(同氏)

 DARPAはPACCの目標として,「JIP(Just In time Power:必要な場所/タイミングで必要な電力を供給可能に)」を挙げている。「JIPは軍事用途のアプリケーションやプラットフォームにとって極めて重要だ。システムを省電力化することで,部隊を新たな作戦に従事させたり,作戦行動時間を延ばしたりできる」(DARPA)

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