米In-Stat/MDRが米国時間8月7日に,「デジタル著作権管理(DRM)技術を巡り,ハイテク業界とコンテンツ開発業界が対立している」とする調査結果を発表した。

 米Napsterがインターネット経由のデジタル・コンテンツ交換システムをリリースして3年以上経過した。それ以降,コンテンツ交換サービスを提供するWWWサイトのユーザー数は指数関数的に増大し,これが著作権のあるコンテンツの不正アクセス/配信を増やす要因になっているという。

 「実用に耐えるDRMソリューションを追求する業界の活動により,レコードや映画会社などのコンテンツ開発業界と,IT業界が対立してしまった」(In-Stat/MDR社)

 コンテンツ開発業界の目標は,著作権付きコンテンツに関し,あらゆる不正なオンライン・アクセスと配信を止めさせることにある。しかし,安全なDRMソリューションを利用した上でコンテンツのオンライン配信を認める,という立場は崩していない。

 コンテンツ開発業界は以下の実例を挙げてDRMの重要性を示しているという。

・1999年から2001年にかけ,世界のレコード業界の売上高が約50億ドル減少した。コンテンツ開発業界は,「この減少は,違法ファイル共有サービスとデジタル・オーディオに対する海賊行為の広まりと直接関係する」と批判している。

・2002年夏の話題の映画,「スパイダーマン」と「スターウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」が,映画館で公開前にネットワークで配信されてしまった。

 一方IT業界では,DRMを大きな可能性のある新しいオンライン配信技術とみなしているという。IT企業の重役の多くは,「ブロードバンド・サービス向けの“キラー・アプリ”がかつて存在したとすれば,それはNapsterだ」などと述べており,その主張には次のようなものがあるという。

・コンテンツに対する海賊行為が実際に行われており,これを止めさせる必要がある。同時に,コンテンツのコピーや共有を限られた回数だけ消費者に許可する現在の法律を支持する。

・コンテンツ開発業界は,常に新しい技術や配信チャネルを攻撃しているようだ。ラジオでレコードをかけることや,ビデオ・デッキで映画を再生することまで,新しい技術の利用を止めさせようとしている。しかし最終的にこれらの技術は,コンテンツ開発業界のビジネスモデルのなかで,重要で収益を期待できる部分になっている。

 なおIn-Stat/MDR社では,DRMなど新しい技術の導入について,次のような分析を行っている「両業界の隔たりは今後も大きなままだが,数年後にはわずかながら歩み寄りがみられるだろう。コンテンツの適正な利用と,DRMアーキテクチャをどのように実施に移すかについて,両業界は根本的に異なる立場にある。そのため,今後数年のあいだは,提訴や立法活動などが盛んに行われることになる」(同社)

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