MPEGビデオ特許のライセンス管理会社,米MPEG LA(Licensing Administrator)」は,MPEG-4関連特許のライセンス規定について特許保有企業と最終的な合意に達した,と米国時間7月15日,発表した。

 6月25日と26日にサンフランシスコで開催した会議を経て,それぞれの特許保有企業と合意に達したもの。正式なライセンスは今年9月に発行する予定である。

 MPEG-4のライセンス料を巡っては,今年1月31日にMPEG LA社が「再生時間に応じた料金(1時間当たり2セント)をコンテンツ所有者/提供者側に課す」という規定を提案,それに対し米Apple Computerや米On2 Technologiesなどが,「(そのライセンス形態では)MPEG-4の市場における成功につながらない」と指摘,MPEG LA社に対して見直しを求めていた。

 今回の合意に達したライセンス規定は,これまでApple社などが問題としてきたMPEG-4 Visual特許のライセンスについて定めた(1)「MPEG-4 Visual Patent Portfolio License」と,MPEG-4 Systems特許のライセンスについて定めた(2)「MPEG-4 Systems Patent Portfolio License」,MPEG-J特許のライセンスについて定めた(3)「MPEG-J Patent Portfolio License」から成る。

 このうちの(1)「MPEG-4 Visual Patent Portfolio License」では,以下(a)~(d)の4条件が盛り込まれている。MPEG LA社では,これらをライセンシそれぞれのビジネス・モデルに合わせて適用していくという。なおこのライセンス規定には,発効後半年間にライセンス契約を結んだ企業・団体は,2000年1月1日~2003年12月31日までに販売した製品に対するライセンス料を支払う必要はない,という条件も盛り込まれている。

(a)特定のライセンスに対してはそのライセンス料に年間の上限を設ける
(b)ライセンス料の報告を必要としないライセンスを設ける
(C)一定の利用度合いに満たない場合は料金を徴収しない
(d)これ以外に,ライセンシのビジネス・モデルに合ったオプションも用意する

 MPEG-4 Visual Patent Portfolio Licenseでは,ライセンシのビジネス・モデルをケーブル・テレビ,インターネット/モバイル,パッケージ・メディアの三つに分類して料金を徴収する。例えばインターネット/モバイルの場合(インターネットは有線,無線ともに含まれる)では,上記(a)の年間の上限金額と(c)の一定の利用に満たない場合の無料使用の条件を適用する。

 この場合,デコーダとエンコーダの製造・販売については,1製品当たり0.25ドルを徴収する。年間の上限は100万ドル。また1年間に販売・配布されたデコーダ/エンコーダのうち,最初の5万個については,料金を徴収しない。

 デコーダとエンコーダの使用については,ライセンシがその会員(ユーザー)1人当たり0.25ドル/1年を支払うか,再生時間1分当たり0.000333米ドル(つまり1時間当たり約2セント)を支払うかのどちらかを選べる。1法人当たり1年間の上限は100万ドルである。また100万ドルを先払いした法人に対してはライセンス料の報告義務を課さない。1年間に最初の5万人までの会員についてはライセンス料を徴収しないという条件も設けている。

 ちなみに,MPEG-4 Visual,MPEG-4 Systems,MPEG-J,それぞれに対して特許を保有する企業は以下の通りである。

・MPEG-4 Visual:キヤノン,France Telecom,富士通,GE Technology Development,General Instrument,日立製作所,Hyundai Curitel,KDDI,松下電器産業,Microsoft,三菱電機,沖電気工業,Philips Electronics,Samsung Electronics,三洋電機,シャープ,ソニー,Telenor AS,東芝,日本ビクター

・MPEG-4 Systems:Apple Computer,Electronics and Telecommunications Research Institute (ETRI), France Telecom,三菱電機,Philips Electronics,Samsung Electronics

・MPEG-J:Sun Microsystems

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