「公共の場所で無線LANに接続できるホットスポットが,無線事業者の注目を集めている。しかし,ホットスポットのビジネス・モデルはまだ確立されておらず,可能性とともにリスクもはらんでいる」。調査会社の英ARC Groupが英国時間7月10日に,ホットスポット市場の今後の展望に関する調査結果を発表した。

 ホットスポット市場の拡大には,無線LANの標準規格である802.11の普及が一役買っている。さらに機器の価格低下,標準規格の取り組み,スループットの増加,ユーザーの関心の高まりなどといった要因が重なり,業界に魅力的なビジネス・チャンスを提供している。全世界における無線LANユーザーは,2007年に1億4700万人に達することが予測されており,企業はコンピュータを使い慣れた初期導入者だけでなく,大衆市場にさまざまなデバイスを売り込もうと着々と準備を進めている。

 「とりわけ無線ネットワーク事業者が,無線インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)との提携や,自らが無線ISPとしてサービスを提供することを視野に入れ,ホットスポット市場へ参入する機会をうかがっている」(ARC社)

 ARC社は,無線ネットワーク事業者がホットスポット市場に関心を寄せる理由を,以下のように分析している。

・公共の無線LANで第3世代(3G)アプリケーションとサービスを試用し,携帯電話ネットワークでの導入に先がけて,これら製品やサービスに対する需要を喚起できる。

・携帯電話ネットワークのトラフィックを無線LANに移すことで,トラフィックの渋滞を防ぎ,より安価なデータ・サービスをユーザーに提供できる。

・無線ISPとしてGPRS関連のアプリケーションを宣伝することで,停滞しているGPRSの普及を促進できる。

 しかしARC社は,携帯電話と無線LANのサービスを統合することが技術的に可能だとしても,財政的に実行可能だとは限らないと指摘する。無線ISPと携帯電話ネットワークの業務では,ライセンシング,機器,導入など,異なる要素が多い。このため両者のコスト構造も根本的に異なる。

 「ホットスポットを2.5Gや3Gサービスと統合して付加価値的に提供すれば,優れたマーケティング・ツールになるだろう。しかしホットスポットによって,収益を短期間で飛躍的に向上させることを期待しているのであれば,無線ネットワーク事業者は失望させられるだろう」(ARC社のTammy Parker氏)

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