「2002年の詐欺行為による被害総額は,全米の売上高の6%に相当する約6000億ドルになるだろう」。米META Group,米NCR Corporationの一部門であるTeradata,詐欺行為を取り締まる米国公認不正調査士協会(ACFE)は米国時間6月19日,米国における詐欺の現状と,詐欺行為を防ぐうえでデータ・マイニングおよびデータ・ウエアハウス技術が果たす役割について調査した結果を発表した。

 ACFEの創設者兼CEOであり,前FBI捜査官のJoseph Wells氏によると,典型的な詐欺行為は発覚するまで18カ月間かかり,その多くは他の従業員からの内報など,偶然わかる場合が多い。「詐欺による損失は,電気料,税金,給与などと同じように,企業についてまわる経費のようなものだ。しかし両者の決定的な違いは,詐欺行為の場合,それが発覚するまでいくら“支払って”いたのか分からない点だ」(同氏)

 「大企業の30%以上が11~100サイロ分の企業データを,複数のデータ・マートを用いて保管している」とTeradata社のCOO,Mark Hurd氏は説明する。さらに「情報が企業内で散在すると,事業の全体像がつかみにくくなり,そのぶん詐欺行為の発覚も困難になる」(同氏)と指摘した。

 META Group社社長兼リサーチ・ディレクタの一人であるDale Kutnick氏は,データ・ウエアハウスとデータ・マイニング技術は,詐欺行為を突きとめ,防止するための強力なツールになるとみている。

 その他の主な調査結果は次の通り。

・詐欺による被害額は,2002年の米国における法人所得税収の3倍以上に達する見通し。

・詐欺による被害額は,政府が刑事司法制度に費やす金額の25倍以上,教育に費やす金額の12倍以上,道路整備に費やす金額の9倍,そして国防に費やす金額の1.5倍以上に達する。

・職場で詐欺行為をはたらく人の多くは初犯者である。

・健康保険関連の詐欺の被害額は950億ドル。米国司法省は健康保険がらみの詐欺行為を,暴力犯罪に次いで取り締まり強化が必要だとしている。

・米国の小売業界に関する最新の調査によると,2001年における米国小売業者の在庫ロスによる損失は330億ドル。その内訳は「従業員による窃盗」が46%で,「客による万引き」が31%。残りは「在庫管理ミス」や「ベンダーによる不正」など。

・在庫ロスを売上高の2%から1%に減少することは,売上高を40%増やすのと同じ効果がある。

・典型的な電気通信事業者が回収し損ねている売上高は,年間純利益の約5%。

・保険に関する詐欺行為による被害額は,平均的な世帯で200~300ドル。

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