「ケーブル・モデムやDSLの世界的な普及に伴い,IPネットワークを介したビデオ・オンデマンド(VOD)サービスの人気が高まっている。2006年には同サービスの利用者数が1700万人に,会員制サービス料とペイ・パー・ビュー料金による売上高が19億ドルに達するだろう」。米In-Stat/MDRが米国時間6月5日,VOD市場の今後の展望について調査した結果を発表した。

 現在,インターネットを介したVODサービス市場では,アダルト・コンテンツが優勢である。しかし,消費者向けVODサービスが浸透し始めると,家族向けコンテンツによる売上高がアダルト・コンテンツのそれを上回る見通しだ。「広帯域ユーザーがVODサービス市場の成長の原動力になる」(In-Stat/MDR社主席アナリストのGerry Kaufhold氏)

 Kaufhold氏によると,現在,米CinemaNow,米Intertainer,米MovieLink,米Movies.comの4社が,IPを介したVODサービスの家族向け提供に乗り出している。CinemaNow社は北米,台湾,シンガポールに拠点を設けており,今後その数を増やす計画だ。Intertainer社は,広帯域接続が普及している米国の35都市でサービスを展開する。残り2社も年内にサービスを開始する予定である。

 「現在は,映画のストリーミングが無料で行われている状態だ。しかし映画会社が,有名なヒット作品をたずさえてVOD市場に参入すれば,ペイ・パー・ビューや会員制サービスが一気に広まるだろう。また,効率的な配信方法やデジタル著作権管理(DRM)技術の開発も急速に進むはずだ」(Kaufhold氏)

 2002年におけるVOD世界市場の全売上高のうち,アダルト・コンテンツが占める割合は98%以上で,約4億6000万ドルにのぼる見込み。しかし2004年末には,IPを介して定期的に家族向けコンテンツを利用するVODサービス加入者数とペイ・パー・ビュー利用者数が,アダルト・コンテンツの利用者数を上まわる。また2006年には,売上高においても家族向けVODサービスがアダルト・コンテンツのVODサービスを抜くことが予想される。

 その他の主な調査結果は次の通り。

・2006年には,世界でインターネット高速接続を行っている消費者のうち,約40%がVODサービスを利用する。サービス利用者が支払う月額料金は,米国の映画産業に19億ドルの売上高をもたらす。

・広帯域家庭ユーザーが最も多い北米市場では,2006年にVODユーザー数が760万人,売上高が8億2000万ドルに達する。

・2006年におけるIPを介したVODサービスは,韓国,台湾,シンガポールなどのアジア諸国の加入者数が世界全体の加入者数の37%を占める。アジア諸国の加入者数が創出する売上高は7億ドルを上まわる。欧州は全世界の売上高の約15%,残りの地域が約4.7%を占める。

・ケーブル・テレビ,衛星放送,地上波デジタル放送などが,オンデマンド市場に勢いを与える。

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