米AirFiberが米国時間5月29日に,光とミリ波を組み合わせた無線通信システム「Hybrid Free space optic/Radio(HFR)」を発表した。「運用には免許は不要で,1Km以上の距離を最大1.25Gbpsで結ぶことができる。霧,豪雨などの天候でも通信でき,可用性は99.999%」(AirFiber社)

 HFRでは,光ファイバを使わずに自由空間で光通信を行うFree Space Optical(FSO)装置と60GHzのミリ波を組み合わせている。「免許不要の無線装置でこれだけの性能のものはHFRが初めて」(同社)

 「光を使うFSOによる長距離の通信は,霧によって信頼性が低下する。それに対し,60GHzの電波は激しい雨によって減衰するので通信距離が限られてしまう」(同社)。そこで同社は,両方の技術を冗長性を持たせて組み合わせる「Redundant Link Controller(RLC)」と呼ぶ手法をHFRで採用し,「あらゆる天候でもエラーの発生しない無線通信を実現した」(同社)。

 RLCでは,FSOとミリ波の信号を同時に監視する。天候による信号の減衰や障害物などによっていずれかの信号に問題が発生したら,正常な方の信号を使って通信を継続させる。「これにより,ネットワークからは完全に透過で,エラー損失が発生しない光ファイバ並みの品質の無線通信が可能になる」(同社)

 従来のFSOと電波を組み合わせたシステムと違い,HFRにはFSOと電波による通信の帯域幅が等しいという特徴がある。「さらに,マイクロ波のバックアップ・システムを使用する方法では,バックアップ回線への切り替え時にデータが失われることがある上,霧の場合には通信速度が大きく低下してしまう。HFRではこのようなことはない」(同社)

 同社は「HFRシステムは,ラスト・ワン・マイル向けの製品」と説明する。「通信事業者は,光ファイバの延長にかかる期間と費用に頭を痛めていた。光ファイバだと敷設に数カ月かかるのに対し,当社の製品は数時間で信頼性のある通信経路を設置できる。しかも,光ファイバよりもはるかに低価格で,免許や許可も不要」(同社)

 RLCを使ったHFRは,先ごろ発売した「AirFiber 5800」で採用している。AirFiber社が現在販売しているHFRシステムの通信速度は,155Mbpsから622Mbps。1.25Gbpsに対応する製品は,2002年後半に発売する予定。仕様書など詳細については,同社のWWWサイトに掲載している。

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