「アリゾナの上空約1万1000mを飛行中のボーイング737-400から,セントルイスで開催されている米Boeingの株主総会にビデオ会議で出席した」。米Connexion by Boeingが,地上と航空機を結んで行った広帯域データ通信のデモンストレーションについて,米国時間5月23日に明らかにした。

 「地上と航空機とのあいだで行った広帯域回線経由のビデオ会議を公開したのは,これが初めて」(Connexion by Boeing社)。

 このデモンストレーションでは,Connexion by Boeing社社長のScott Carson氏と,同社システム開発ディレクタのEd Laase氏が広帯域回線を使ってビデオ会議を行った。このとき地上にいるCarson氏と機上のLaase氏の距離は,水平方向で約1600Km,垂直方向で約1万1000m離れていたという。

 ビデオ会議のデモンストレーションに使用したチャンネルの通信速度は,航空機に向かう方向が5Mbps,地上に向かう方向が256kbps。回線全体の通信速度は,航空機方向が20Mbps,地上方向が1Mbpsだったという。

 Connexion by Boeing社では,航空機で同社の広帯域通信サービスを提供することで,以下のようなさまざまなサービスが実現可能になる,と説明している。

・機上オフィス:インターネット接続,音声,ビデオ,電子メール,イントラネット接続など,現在のオフィスで利用可能なものと同等の通信速度/品質を持つデータ通信サービスを提供できる。

・航空機運行の改善:航空会社の情報ネットワークに航空機を含めることで,運行センターとの会話,複数のチャンネルを使ったデータ転送などが実現する。

・急を要する際の判断材料:病気などで具合が悪くなった乗客に対処するため,航空機の針路変更を行って目的地外着陸を行うことがある。これにかかる費用は大きい。そこで,地上にいる医師などが広帯域回線経由で乗客を診察する。これにより,目的地外着陸をすべきかどうかを機長に指示できるようになる。

 なおConnexion by Boeing社は,Boeing社,米American Airlines,米Delta Air Lines,米United Airlinesの航空4社が共同出資して設立した会社。旅客機内で双方向の広帯域ネット接続サービスを提供することを目的としている。これまでに以下のような活動を行っている。

・米国領土および領海上空での通信サービス運用に関する免許を,米連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)から取得。

・商用旅客(ドイツLufthansaのボーイング747-400)に,Connexion by Boeingを初めて取り付け。

・ボーイング737-400へのConnexion by Boeing取り付けに対する認可を,米連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)から取得。

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