米Microsoftが米国時間4月11日に,Webサービスをベースとする将来のコンピューティングに関するビジョンを明らかにした。同社.NET Enterprise Servers担当上級副社長のPaul Flessner氏と,.NET Enterprise Server部門上級アーキテクトのPat Helland氏がMicrosoft TechEd 2002の基調講演で語ったもの。

 同社は“アプリケーション・モデル”,“データ”,“Trustworthy Computing(信頼に足るコンピューティング)”という三つのキーワードを挙げ,「これら3本の“柱”が革新と新しい技術をもたらし,次世代のWebサービスの基盤を提供する」(両氏)と説明する。

 主な発表内容は以下の通りである。

【アプリケーション・モデル:相互接続した巨大システムによる自律コンピューティング】
 今日多くの企業では,Webサービスを使って社内システムの統合やパートナ/顧客のシステムの接続を実現することで,大きな恩恵を得ようとしている。そのために,既存の技術資産をWebサービスで“包む”ということを行っている。この方法でもただちに具体的なメリットを得られるが,将来は,一つの巨大で融通のきかないアプリケーションを,自律動作する小さな複数のWebサービスに分解することにより,より大きな利益を得られるようになるだろう。

 この新しい手法と関連する標準技術やプラットフォームにより,顧客は現在より深く柔軟性のある“デジタル”的な関係を,Webサービスを通じて築けるようになる。さらに,高度な拡張性,可用性,信頼性もより容易に実現できる。

【データ:XMLによるデータの統一】
 現在は,さまざまな形式のデータをいろいろな場所に保存しているため,これらをまとめるのが難しい。投資情報などの構造化したデータはデータベースに,文書やメッセージといった非構造化データはファイル・システムやeメールなどのサーバーに,といったようにばらばらな場所に格納している。さらに,現状のツールや技術には,どのような場所からでもデータを探し出したり,構造化/非構造化データを簡単に統合したりする機能が不足している。

 Microsoft社は,ストレージや構造化/非構造化データをXML形式にすることで,データ統一の実現を図っている。将来,同社は,XMLベースのスキーマを利用してストレージの仕組みを拡張し,あらゆる種類のデータをどこからでも簡単に見つけ出せるようにする。さらに,Webサービスを介して,考えられるすべてのデータ保存に関して統一したプログラミング・モデルを作る取り組みを続ける。最終的には,ネットワークやインターネットに接続していなくても,アプリケーションからデータにアクセスできるようにする。

【信頼に足るコンピューティング:安全性,可用性,プライバシ】
 水道,電気,通信回線と同レベルの信頼性を,ITで実現することを目的とする。つまり,安全なソフトウエアとサービスを組み合わせることで,安全でプライバシを保護できる技術を作ることだ。この目標の主な要素に,相互に関連性のある安全性,可用性,プライバシがある。

 これを実現するためMicrosoft社は,顧客,サポート,開発,パートナとのあいだに密なフィードバック・ループを構築している。その結果,問題の発見と解決をより迅速にし,問題発生前にソフトウエアのアップデートを顧客に通知できるようになる。さらに,自己管理/自己調整可能であったり,標準の状態で安全に設定されているソフトウエアの作成に努めている。その結果,管理にかかるコストを大幅に下げることができるだろう。

 ソフトウエアの設計/試験に関する進歩のほか,ハードウエア/ネットワーク技術,Webサービスの標準,運用プラットフォームの進歩,充実した冗長性のあるデータ・ストレージを組み合わせることで,復元力の高いシステムを提供する。

 なおMicrosoft社は同日米IBM,米VeriSignとともに,Webサービスのセキュリティ仕様「WS-Security」のについて明らかにした。これは,Webサービス向けの包括的かつ柔軟性のあるセキュリティ・モデムの基盤となるものという。さらにMicrosoft社とIBM社は,より安全なWebサービスへの対応で必要となる機能の追加などについて,そのロードマップを発表している。

 WS-Securityとロードマップについては,Microsoft社のWWWサイトに掲載している。

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