ドイツのSuSE Linux AGが,Linuxの公式カーネルに米Advanced Micro Devices(AMD)のx86-64命令セット(x86命令セットの64ビット拡張版)用拡張機能を提供した。米AMDが米国時間2月28日に明らかにしたもの。Linuxのカーネルとは,Linux OSの基礎部分に相当するソース・コードである。

 AMD社の次期プロセサ「Hammer(開発コード名)」はx86-64命令セットに対応しており,32ビットと64ビットのどちらのアプリケーションも動作する。「32ビット環境から64ビット環境へシームレスに移行できるよう設計したシステムなので,ユーザーはこれまで長期にわたって投資してきた資産を活用できる」(AMD社)。Hammer製品系列の最初のプロセサは,2002年末に出荷開始する予定。

 Linuxカーネル,Linux開発ツール,そのほかのLinux用ソフトウエアにおけるx86-64技術対応は,SuSE社が中心になり作業を進めていた。「x86-64対応機能を組み込んだLinuxの一般向けリリースは,Linuxカーネルのバージョン2.6以降をベースにしたものになるだろう」(AMD社)

 なおAMD社によると,Linuxの創始者Linus Torvalds氏が次のようなコメントを出したという。「公式なLinuxツリーでAMD社の次期プロセサに対応することで,Linuxユーザーは誰でも,x86-64ネイティブなアプリケーションおよび既存の32ビットx86アプリケーションを動作させることが可能になる」(同氏)

 またAMD社は同日,新たな設計センター「Boston Design Center」を開設すると発表した。同センターはサーバーと相互接続技術「HyperTransport」の開発を担当し,AMD社のコンピューテーション・プロダクツ・グループを支援するという。同センターはマサチューセッツ州ボックスボローに拠点を置き,当初約35人の技術者を採用する。AMD社の前社長兼APIネットワーク担当CTOのGerry Talbot氏が,AMD社の上級フェローに就任し,同センターのディレクタを兼任する。

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[www.amd.comに掲載の発表資料1(SuSE LinuxのHammer対応)]
[www.amd.comに掲載の発表資料2(設計センターの開設)]