「ムーアの法則を拡張してコンピューティングと通信を融合し,新しい応用分野を作り出す」。米IntelのCTOであるPatrick Gelsinger氏が米国時間2月28日に,サンフランシスコで開催中のIntel Developer Forum(IDF)Spring 2002の講演で述べた。

 「ムーアの法則は今後数10年にわたってLSIの技術革新を急速に促進する。その影響はこれまでのデジタル機器という分野を超えて,無線,光学,センサーといった新しい領域に及ぶだろう」(同氏)

 Gelsinger氏は,「複雑で高度に集積されたシリコン・ベースの技術を,これまでその恩恵受けたことがない分野にまで拡張する。急速に進歩する技術革新の利用,ムーアの法則に関連するコストの削減。これが我々の目的である」と説明した。講演のなかで同氏は,Intel社が研究している以下の3つの技術を紹介した。

・シリコン無線機
 マイクロ・マシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems),シリコン無線機,ローミング・ソフトウエアを組み合わせることで,いたるところで無線通信を可能にし,「いつでもつながっている」通信環境を実現する。「そのうちに,すべてのLSIに無線機が内蔵される時代になる」(同氏)。これにより,イヤリング型の携帯電話機も実現できる。

・アドホック・センサー・ネットワーク
 自律的にネットワークを構築する無線機能付きセンサー。この技術をシリコン技術と組み合わせることで,お互いに情報を交換する高機能なセンサーを安価に開発できるようになる。乳幼児の健康状態や危険な兆候を監視する“smart clothing(頭脳を持つ衣服)”“connected blanket(通信機能つき毛布)”といった製品や,地面のあちこちにシリコン・センサーを埋め込んで水や肥料の管理を行う“smart farmlands(賢い農地)”が実現可能。

・シリコンを使った光スイッチング
 ムーアの法則の適用範囲を広げ,デジタル論理機能とシリコン・ベースの光電子デバイスを一つのLSIに集積する。光接続のコストを下げ,高速な通信を実現することが目的で,光接続のコストが100分の1になる。

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