米IBMが米国時間2月25日に,動作周波数110GHz以上の電子回路を開発したと発表した。「電気信号を1秒に4兆3000億回処理できる世界最速の回路」(IBM社)という。同社が「SiGe 8HP」と呼ぶSiGe(シリコン・ゲルマニウム)製造技術を用いた。カリフォルニア州で開催中の「2002 Compound Semiconductor Outlook Conference」で明らかにしたもの。

 「多数のチップ・メーカーはSiGe技術を用いたトランジスタ製造を始めたばかりだが,IBM社のSiGe技術はすでに4世代目だ」(IBM社フェロー兼Communications Research and Development Center部門バイス・プレジデントのBernard Meyerson氏)

 今回IBM社がSiGe 8HP技術の検証のために開発した回路はリング発振器である。この回路を通信用チップに用いることにより,「100Gビット/秒の転送速度を可能にする」(IBM社)としている。

 IBM社はすでに特定の顧客と,SiGe 8HP技術を用いた回路設計で協力体制を敷いており,有線通信アプリケーションの開発および認定作業を進めているという。またIBM社は,無線通信アプリケーションに特化したSiGe技術「SiGe 5PA」「SiGe 5DM」も同時に発表した。

 SiGe 8HP技術で製造した最初のチップは,今年中に市場に登場する予定である。

 ちなみに調査会社のIC Insight社によると,SiGeチップ市場の規模は2001年の3億2000万ドルから2006年には27億ドルに成長する見込み。IBM社のSiGeチップによる収入は2001年に前年比86%増加し,市場全体の売上高の80%以上を占めたという。

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