米Lucent Technologiesの米Bell Labs(ベル研)が,赤外線領域の広い周波数帯で連続的に発光する半導体レーザーを開発した。Lucent社が米国時間2月21日に明らかにしたもの。「このレーザーの応用範囲は,高度な光通信分野から高精度の化学物質検出までと広い」(ベル研)

 同広帯域レーザーの詳細は,英国の科学雑誌「Nature」の2月22日号に掲載するという。

 広帯域レーザーの応用例として,ベル研物理学者のClaire Gmachl氏は「極めて微量の大気汚染を検出可能な高精度で応用範囲の広い検出器に利用できる」と説明する。「呼気を分析するような,新たな医療用分析機器にも応用できるだろう」(同氏)

 半導体レーザーには,小型/堅牢/強力という長所があるが,一般的に放射する光の波長が狭く,単一の波長しか放射できない。それに対し,ベル研が開発した半導体レーザーは,広い帯域の波長の光を同時に放射することができる。

 ベル研の広帯域レーザーは,標準的な半導体材料の層を650回以上サンドイッチのように積み重ねている。これらの層を36のグループに分け,各グループにそれぞれ異なる光学励起特性を持たせた。各グループの放射する光の波長は,ある狭い値に固定されているが,これらを組合せることで広帯域のレーザー放射を実現する。なお,この広帯域レーザーは,1994年にベル研が発明した“量子カスケード(QC)レーザー”の一種である。

 同レーザーの放射出力は,波長6μm~8μmの中赤外線領域におけるピーク・パワーが1.3Wだという。「放射可能な波長の範囲は,広げることも狭めることも原理的には可能だ。将来は,光ファイバ向けなど,特定用途の要求に合わせた特性のレーザーを作ることもできるようになるだろう」(Gmachl氏)

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