米Hewlett-Packard(HP)と米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が,分子サイズの論理LSI作成に関する米国特許を取得した。HP社とUCLAが米国時間1月23日に明らかにしたもの。「極めて複雑な論理LSIを,簡単かつ安価に製造できる」(HP社およびUCLA)

 関係する特許は,以下の3件である。

・米国特許番号は6,314,019。タイトルは「Molecular-Wire Crossbar Interconnect (MWCI) for Signal Routing and Communications」。1999年3月29日に申請し,2001年11月6日に成立した。49件のクレームから成る。

・米国特許番号は6,128,214。タイトルは「Molecular Wire Crossbar Memory」。1999年3月29日に申請し,2000年10月3日に成立した。31件のクレームから成る。

・米国特許番号は6,256,767。タイトルは「Demultiplexer for a Molecular Wire Crossbar」。1999年3月29日に申請し,2001年7月3日に成立した。33件のクレームから成る。

 HP社とUCLAの共同研究チームは,分子電子工学をテーマとする。10年以内にシリコン・ベースの集積回路の強化を可能にし,最終的には置き換えを目指すという。「ほとんどの専門家は,2012年くらいまでにシリコン技術が物理的/経済的限界に達するとみている」(HP社およびUCLA)

 研究チームは導線で単純な格子構造を作り,分子1個分の厚みしかない電子的なスイッチで導線の交わる部分を接続した。導線の幅は原子数個分。電子的なスイッチには,ロタキサンと呼ばれる有機化合物を用いた。交差した導線のあいだに閉じ込めた分子に信号を流すことで,電子的な論理ゲートを作成できたという。

 「分子がコンピュータの論理回路用の電子デバイスとして利用可能なことを初めて示した」(米California Nanosystems InstituteディレクタでUCLS化学学部教授のJames R. Heath氏)

 格子構造から論理回路を作成する手法について,HP社の上級科学者兼コンピュータ・アーキテクトのPhilip J. Kuekes氏は,「基本的な格子を作成してしまえば,分子サイズの構造内にあるスイッチをプログラムを使って適切に設定することで,極めて複雑な論理設計を行うことができる」と説明する。「今日の複雑で高精度を必要とするLSIの製造技術を,将来プログラミングに置き換えられるだろう」(同氏)

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