米Microsoftに不当に高いソフトウエア料金を徴収された,として起こされていた集団訴訟で,Microsoft社と原告側が和解協定に署名した。Microsoft社が米国時間11月20日に明らかにしたもの。

 和解協定には,現金やコンピュータのハードウエア,ソフトウエア,技術支援,トレーニングなどをMicrosoft社が米国の公立学校に提供するというプログラムが盛り込まれている。この和解協定は米国時間11月19日にMicrosoft社と原告側で署名しており,20日にメリーランド州の連邦地裁に提出されるという。また,これについての公聴会が11月27日に開かれる予定である。

 Microsoft社が提供するプログラムの実施期間は5年間。Microsoft社は,10億ドルを超える金額に相当する製品やサービスを提供することになる。対象となるのは1万2500以上の学校。これにより「米国で最も経済的に恵まれない700万の子供たちが通う学校の,コンピュータ技術へのアクセスを支援する」(Microsoft社)。

 Microsoft社は,パソコン向けOS市場において独占的地位を不法に利用し,不当な料金で消費者や企業,教育機関などにWindowsのライセンスを行ったとして,全米規模で集団訴訟を起こされていた。集団訴訟は州と連邦レベルのそれぞれで起こされていたが,Microsoft社によれば,「州レベルの訴訟は,その多くが連邦最高裁の判例にもとづき却下された。また連邦レベルの訴訟はそのすべてがまとめられ,メリーランド州の連邦地裁で審理されていた」(Microsoft社)。今回の和解協定が同地裁に承認されれば,Microsoft社はこれら「100以上の訴訟で和解に達することになる」(同社)。

 なお,同日Linuxディストリビュータの米Red Hatが,この和解協定に反対する形で代案を提案する声明を発表した。Red Hat社によると,今回Microsoft社が提供するものの大部分はMicrosoft社製ソフトウエアで占めるという。Red Ha社は,「Red Hat Linuxやオフィス・ソフトウエアはRed Hat社が無償提供するので,その分のお金でハードウエアを購入して学校に贈与する方がよい」,と代案を示している。これにより,Microsoft社が提供するハードウエアの数が20万台から100万台以上に増え,1校当たりでは14台から70台以上になるという。

 またRed Hat社は,オンラインによるサポート・サービスも提供するほか,Microsoft社のように5年間という期限を設けないという。「5年が過ぎれば学校はライセンスを更新しソフトウエアをアップグレードしなければならない。Red Hat社なら(期限なしで)オンライン配信チャネルを通してアップグレードできる」(Red Hat社)。

 「この和解協定は解決策にはならない。Microsoft社の独占を増大させ,最も弱い立場のユーザーにそれを広げることになる。Red Hat社がソフトウエアを提供することで,学校にソフトウエアの選択肢を提供し,同時にMicrosoft社が提供するハードウエアの台数を増やせることになる。本当に学校を救いたいと考えているのなら,それを示すのはMicrosoft社次第だ」(Red Hat社)。

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[Microsoft社の発表資料]
[Red Hat社の発表資料]