「20年後にインターネットがもたらすものは?」という質問に対してノーベル賞受賞者の回答結果をまとめたものが,米国時間11月20日に発表された。この調査は,米Cisco Systemsの依頼を受け,Princeton Survey Research Associates(PSRA)社が実施したもの。電話,インターネット,書簡によって行われた調査には,ノーベル賞受賞者全体の約3分の1に該当する71名の受賞者たちが参加した。

 受賞者の69%は,もしインターネットを使っていたら自分の研究の完成を早めることができたと回答しており,93%はインターネットが図書館,情報,教師たちへのアクセス手段を改良すると考えている。82%はインターネットが技術革新を早めると予測しており,72%はインターネットが世界の生活水準を高めるために大きな役割を果たすと考えている。

 受賞者たちは,教育分野におけるインターネットの役割にもっとも関心を示しており,不十分な教育機会こそが,人類が直面するもっとも重要な問題だと見なしている(92%)。また将来的に,インターネットは教育を改良するためによい影響を与える(87%),世界中の図書館,情報,教師たちへのアクセスを提供する(93%),2020年までにより多くの生徒が仮想クラスを通してより多くの学ぶ機会が与えられる(74%)と考えていることが分かった。

 また受賞者たちは,インターネットが技術革新を早め,高度な科学知識を進歩させると信じている(82%)。さらに69%は,インターネットを使っていれば,自分の研究の完成が早まっていただろうと考えていることが分かった。83%は,生産性を高める上でインターネットは大きな役割を果たすようになると予測している。これらの結果は,技術革新,科学の発展,世界が変化する速度に対してインターネットが大きな影響を与えると信じていることを示している。

 教育と技術革新の以上に,受賞者の多くが,生活水準の向上にインターネットが大きな役割を果たすと信じている(72%)。これは,発展途上にある国の人々に経済的な機会を提供すること(72%),他国の人とのコミュニケーションを向上させること(93%),異なる国と文化にある人々の間の境界を無くすこと(76%)によって実現されると考えている。

たとえば,1977年にノーベル平和賞を受賞したアムネスティ・インターナショナルは,拷問の廃絶を訴える世界規模のキャンペーンでWWWサイト,www.stoptorture.orgを活用している。その結果,虐待を受ける危険にあった多くの人々が拘留から開放され,また多くの人がさらに虐待を受ける可能性から逃れることができた。このサイトにより,世界中の支持者が危機にさらされている人たちに代わって直接虐待に関わる権力や組織に懇願や抗議を訴えることができる。

 「アムネスティ・インターナショナルは,インターネットが人権問題に対してより多くのそしてさまざまな活動家を啓蒙する手段を拡大させると信じている」(アムネスティ・インターナショナルのコーディネータのMark Neuman氏)。

 インターネットに大きな可能性があることを信じている一方で,いくつかの懸念すべき事項があることも明らかになっている。懸念事項として,プライバシーの侵害(65%),孤立化の増大(51%),政治的または経済的な不公正の増大(44%)などを挙げている。

 全体として,調査対象となった受賞者のほとんどは,インターネットがそれぞれの研究と生活に対してポジティブな影響を与えると答えている(85%)。大半の受賞者はコンピュータを使用しており(88%),またインターネットと電子メールも89%が使っている。

 「この調査結果は,受賞者のほとんどが,成長過程においてコンピュータやインターネットを使用してこなかった点で非常に興味深い。実際のところ,受賞者の平均年齢は72歳である」(PSRAの副社長のMary McIntosh氏)。

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