米Identixが米国時間10月18日に,サンフランシスコ国際空港(San Francisco International Airport)が米Identixの技術を用いたバイオメトリクス認証システムを採用することを明らかにした。

 サンフランシスコ国際空港が採用するのはNECの米国子会社NEC Technologies社のワークステーション「NEC/LS-21 Live Scan」。NEC/LS-21 Live Scanは,NECの自動指紋認証システム(AFIS:Automated Fingerprint Identification System)とIdentix社の指紋認証技術「TouchPrint 2000 Live Scan」技術を組み合わせたシステムを提供する。

 サンフランシスコ国際空港は,NEC/LS-21 Live Scanシステムを使って新規採用や契約を更新する従業員がテロリストの容疑者や犯罪者など危険人物でないかどうかをチェックする。2001年10月末までにシステムの導入を完了する予定である。

 なお,Identix社の指紋認証技術はこれまでにもニューヨーク(JFK),ボストン,ワシントン,フロリダ(オーランド),ダラス,シカゴなどの9つの主要空港が同様のセキュリティ・システムとして導入済みであるという。ただし,現在のところ指紋チェックの対象としているのは新規雇用のみで,すでに雇用している従業員は対象外となっている。

 同時多発テロを受け,米上院では全米の400を超える空港に対し,従業員に犯罪歴の有無など危険人物でないかどうかの確認を義務づける法案を可決した。法案は今後下院で審議を経て成立する見通しである。Identix社は,今後もさらに多くの空港でバイオメトリクス認証技術の導入が拡大すると見込んでいる。

 Identix社は従業員の雇用を対象とするセキュリティ・チェックを第1段階と位置づけており,第2段階として「従業員による様々な空港施設へのアクセス」,第3段階として「搭乗客のチェック」が必要であるとしている。第2段階の「空港施設」には,滑走路やコンピュータ・ネットワーク,コックピットなどが含まれる。指紋認証技術のほか,PINコードやパスワード,ドア開閉のセキュリティ機能などを組み合わせる。

 第3段階の搭乗客チェックでは,搭乗客に危険人物がいないかどうかをチェックの上,パスポート,搭乗券,荷物の3点をひとまとめにリンクさせるソリューションを提唱している。「クレジット・カードに使われているような磁気ストライプに指紋の画像をスキャニングし,それを搭乗券,パスポート,荷物のタグにつけることで,なりすましを防ぐなどセキュリティを高められる」(Identix社)。

 なお,従業員や応募者,搭乗客のプライバシを保護するため,指紋照合はデータベースとのリアルタイム・チェックで行い,画像の保存はしない。

 Identix社の指紋認証技術は,NEC Technologiesのほか,米Motorola,米Compaq Computer,東芝,米VeriSign,米Unisysなどが採用している。

 Identix社は10月3日(米国時間)に,空港のセキュリティに関する調査結果を発表している(関連記事)。「空港のセキュリティ強化のため,搭乗時におけるバイオメトリクス(生体認証)技術を使った指紋のチェックにも進んで協力する」と回答した人が82%に達しているという。

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